弍拾伍 ページ26
私はデザイナーをしている。
爆豪さんにはいつもご指名で服のデザインも手がけさせてもらっている。どんなものでも文句を言わない辺り、優しい。
私は焦凍さんのことも爆豪さんのことも、皆さんのことも知っていた。有名人だから。
そんな17歳の夏休み、学校にプリント1枚のために学校に行った帰りだった。暑さに脳がオーバーヒートしそうで偶然にも寄ったコンビニで、
(･･･雄英生の制服、)
目の端で捕らえた微かなそれを追うことはせず、適当にアイスを握ってお会計を済ませて外に出た時だった。
『！』
｢イヤホンしながらってナメてんのか、テメェは。｣
眉間に寄ったシワ、赤い瞳、クリーム色のクセのあるツンツンヘアー、不機嫌な表情、その知った人は、私の右耳のイヤホンを片手に睨みを利かす。
その時、ガサッと手から袋が滑り落ちる感覚と音がした。｢何やってんだ｣と、袋を拾う爆豪さんは顔を上げて私を見るなりぎょっとした。
｢はぁ！？何泣いてだ、クソが！｣
私も驚いた。濡れた目からは止まることなく涙が零れる。
『え、あ･･･ごめん、なさい、』
｢･･･だぁー！来い！｣
勢いよく腕を掴まれ、引かれるままについて行く。
連れてこられたベンチは木陰がちょうど良くて、涼しい。私の買ったアイスはすんでのところで溶けずに済んだ。
それを爆豪さんに上げた。
｢落ち着いたかよ。｣
『うん･･･』
｢あんな所で泣くんじゃねぇよ。｣
『うん･･･』
ブチッと何かのキレる音。
｢テメェはそれしか言わねぇのか！？｣食い付いてくる爆豪さんに懐かしさと、嬉しさを感じる。
『覚えてて、くれたの？』
｢あ？勝手に覚えてた。それだけだろ。｣
『そっか･･･そっかぁ、』
｢あ！？なんでまた泣くんだよ！｣
3度、これで4度目の人生で一番の喜びだった。
今の今まで誰も覚えていなかった。町や、何かで見つけて会いに行ったり声をかけても｢人違いだ｣なんていつもだった。
のに、4度目にして爆豪勝己という人が私に声をかけてくれた。覚えていてくれた。それだけで救われたのだ。
『焦凍さ、んは？』
1番気になったそれに触れると爆豪さんは眉を寄せた。少しの間に｢あ、そっか｣と、悟ってしまった。
覚えていないのだ。
『･･･仕方の無いことですね。』
よく、ある。と言うより2度目。
1度目は風の噂で流れてきた焦凍さんを追いかけた結果、私は幸せそうな彼をただ、呆然と見つめた。
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鈴音(プロフ) - 本当に泣きました。語彙力があってうらやましい限りです。これからも頑張ってください。これからも読みに来ます。 (2018年8月22日 17時) (
レス) id: ec91683ef5 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - 苺デラックスさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて良かったです。爆豪の話口調や性格は探り探りなので、良かったです。最後までありがとうございます。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - うさたまさん» 返信遅くなってごめんなさい！コメントありがとうございます。これかも作品共々よろしくお願いします。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
苺デラックス - お疲れ様でした。私はこれを読んで号泣してティッシュの箱を1箱空にしてしまいました笑本当に泣けます。勝己の幸せになれやと、全部捨てて俺といろよがなくポイントでした。素晴らしい小説だと思います！本当にお疲れ様でした！ (2018年3月30日 0時) (レス) id: e851a42e9b (このIDを非表示/違反報告)
うさたま(プロフ) - 心が浄化されましたありがとうございますこれからも頑張って下さい！！ (2018年3月25日 19時) (レス) id: 2ffea79b62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：秋雨秦 | 作成日時：2017年10月13日 20時
