弍拾肆 ページ25
｢おい、さっさと起きろ。｣
ソファでみっともなく寝ている私の額をコツり、と小突くのは爆豪勝己。
私の、ルームシェア相手で友達で、昔の私を、それを覚えている数少ない相手だ。
『･･･』
｢チッ、また見たのか。｣
『うん･･･』
ぼんやりとする頭は夢と現実を曖昧にし、私の顔を覗く爆豪さんの顔を見つめる。
しばらく見つめあって先に目を逸らしたのは爆豪さんだ。舌打ちと、眉間に寄せた皺はどこか苦しそうに見える。
『今、何時？』
｢あ？自分で見ろや、んなもん｣
『そう、だね･･･』
｢･･･大丈夫か｣
なにが？聞き返す私から目を逸らす。
キッチンに立ってコップに水を注ぐ爆豪さんの動作を目で追う。なぜ、こんなに醒めないのか。答えは一つだった。
私の夢は現実の、過去にあった事であまりにも鮮明すぎる夢は現実との境界線を無くしてしまう。
手渡される水を一飲みする。
｢これからテメェはどうすんだ。｣
『？どうって？』
｢あいつは、覚えてねぇだろ。｣
『･･･どうも･･･しょうがないです。私は、彼が覚えている事を信じて、信じてダメだった。彼は覚えてなかった。それだけ。』
敬語になったり、タメ口になったりとその変動に爆豪さんは何もいいはしないものの、眉間に寄ったシワが腑に落ちなさそうな形になる。
｢何回、生き返った。｣
爆豪さんとは5年の付き合い。つまりは17歳からの知り合いだけど触れてこなかった所を今、触れてきた。
元々爆豪さんはそういう事は聞かない。ズケズケと入り込まない。が、今日は違うらしい。
爆豪さんを隣に座る様に促すと大きく揺らして座る。
『3回、いや4回ですね･･･』
｢その中であいつに会えたのは？｣
『2回目。1度目は見つけたけど遅かった･･･結婚してた。お見合いで知り合った人で、とても綺麗な人だった。2度目は今回、』
いつもの感覚が戻ってくる。
静かに瞬き、カーテンの隙間から零れる陽の光に目を細めた。
｢テメェは･･･｣
『？』
｢テメェは何してた。｣
『私？私は･･･』
聞くに足らないことだよ。そう、言おうと思ったけど爆豪さんには正直でありたかった。
大切な友人に隠し事をしたくないのだ。
『3度も結婚もせずに、老人になって一人寂しく息を引き取った。今回も、そうなるのかなって思ってる･･･』
｢･･･｣
爆豪さんの表情が固くなる。
そんな顔をしてほしい訳じゃない。
目を見ると微笑んだ。
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鈴音(プロフ) - 本当に泣きました。語彙力があってうらやましい限りです。これからも頑張ってください。これからも読みに来ます。 (2018年8月22日 17時) (
レス) id: ec91683ef5 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - 苺デラックスさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて良かったです。爆豪の話口調や性格は探り探りなので、良かったです。最後までありがとうございます。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - うさたまさん» 返信遅くなってごめんなさい！コメントありがとうございます。これかも作品共々よろしくお願いします。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
苺デラックス - お疲れ様でした。私はこれを読んで号泣してティッシュの箱を1箱空にしてしまいました笑本当に泣けます。勝己の幸せになれやと、全部捨てて俺といろよがなくポイントでした。素晴らしい小説だと思います！本当にお疲れ様でした！ (2018年3月30日 0時) (レス) id: e851a42e9b (このIDを非表示/違反報告)
うさたま(プロフ) - 心が浄化されましたありがとうございますこれからも頑張って下さい！！ (2018年3月25日 19時) (レス) id: 2ffea79b62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：秋雨秦 | 作成日時：2017年10月13日 20時
