弍拾参 ページ24
轟焦凍 側
震えている右手を握り、愛おしくてたまらないその手を頬に当てる。ここにいる。それを伝えるために。
名前を呼ぶと薄く開かれた目がこちらに向く。
喜びで何を話せばいいのか、何を伝えれば良いのか言葉足らずな俺は｢気分は？｣そんなことを聞くことしか出来ない。
『･･･しょうと、さま』
｢？｣
力のない手が頬から服を掴み、引かれる感覚にAの体を抱き起こす。
｢どこか痛むところはーー｣
『ありが、とう、こんな、私を愛してくれて』
俺の言葉を遮ってまで言ったことはまるで死ぬ様な言葉だ。と俺は思った。
そんな言葉を払い除ける。
｢これからもずっと愛している。｣
『っ･･･嬉しい限りです、』
Aは力のない体を離し、俺を見て微笑む。
近づく唇に目を、伏せようとする。
｢ーー！｣
そんな俺の唇を掠めたのは髪で、横で鈍い音と共に視界が開ける。
それは何を示したのか、横たわるAの体を抱き寄せる。
｢Aっ･･･A！｣
体の端々から抜ける鬼火が悪夢へと変える。
｢頼む、まだ逝かないでくれ、頼むっ、まだ、俺は何も、何も･･･っ、｣
｢ーー･･･｣
冬が近づくと俺は決まって夢を見る。
誰か、多分俺が泣いてる。何かを抱いて、何かを必死になって言い続けている変な夢だ。
その変な夢に馬鹿みたいに涙が出る。何も感じない、それなら楽なのに無性に寂しく、絶望に駆られる。
ブー、ブーっ、
枕元のスマホに手を伸ばし、充電器を抜くと画面をスライドして耳に当てる。
｢はい･･･｣
耳元からは仕事の話だ。折角の休みが無くなってしまう、という悲劇的な電話。
｢分かりました。すぐに向かいます。｣
切り、仰ぐように溜息をつく。
仕事をする気分ではない。そんな私情を挟めないのが22の俺に大人だと、突きつける。
プロヒーローになっても、何になっても心の奥深く、俺の知らない何かが満足していない。
そんな不確定で、得体の知れないものを追求することはない。服を着替え、その場を後に仕事へと向かった。
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鈴音(プロフ) - 本当に泣きました。語彙力があってうらやましい限りです。これからも頑張ってください。これからも読みに来ます。 (2018年8月22日 17時) (
レス) id: ec91683ef5 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - 苺デラックスさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて良かったです。爆豪の話口調や性格は探り探りなので、良かったです。最後までありがとうございます。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - うさたまさん» 返信遅くなってごめんなさい！コメントありがとうございます。これかも作品共々よろしくお願いします。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
苺デラックス - お疲れ様でした。私はこれを読んで号泣してティッシュの箱を1箱空にしてしまいました笑本当に泣けます。勝己の幸せになれやと、全部捨てて俺といろよがなくポイントでした。素晴らしい小説だと思います！本当にお疲れ様でした！ (2018年3月30日 0時) (レス) id: e851a42e9b (このIDを非表示/違反報告)
うさたま(プロフ) - 心が浄化されましたありがとうございますこれからも頑張って下さい！！ (2018年3月25日 19時) (レス) id: 2ffea79b62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：秋雨秦 | 作成日時：2017年10月13日 20時
