弍拾弍 ページ23
轟焦凍 側
鬼火を掛けとしてAの意識に入れた。
布に巻かれた左目は過去の俺を連想させ、無くなった左腕は鬼火のお陰だろう。傷はない。
もう一月は眠っている。
この山一番の先生に
｢目を覚まさなかったらそこまで。今、この子がこうして生きている事が奇跡なんだよ。それをよく分かっておきな。｣
そう、言われた。
俺の脳は至極冷静だった。
そうか。そうなんだ。
意外とあっさりと受け入れた。
それから毎日体を拭き、鬼火を集めては心へと入れる。ゆっくり、慎重に･･･
毎日
｢どう？様子は。｣
誰かが家を訪れる様になった。
緑谷、飯田、切島、麗日、その他にも知り合いは皆。
Aの顔を見ては｢綺麗な人だ｣と皆が褒め、芦戸や八百万なんかは髪を綺麗に解いてくれたりもした。俺よりも上手なのは同じ性だからだろう。
｢･･･よぉ、｣
時々、珍客が来る。
｢まだ寝てんのか、愚図女｣
爆豪はいつもより優しげな声でAに話しかける。この時、俺は部屋からは出ている。
爆豪の気持ちを知っている。
好意をもち、Aを俺と同じ様に大切に想っている。だからこそ、Aの怪我を見た時には胸倉を掴まれて殴られた。
｢テメェが！ちゃんと守っていれば、っこんなことにはならなかったんだろうが！！｣
息を荒らげ、赤い瞳が今にも揺れそうなほど瞳が艶を持っていた。
爆豪なら、こんなことにはならなかったんだろうな。何度も思った。思い、それでも尚
｢悪い･･･でも、まだ、居たい･･･｣
爆豪の手を握り返す。
鋭く、刃物のような視線が俺から逸らされた。
ありがとう爆豪。
｢お、帰るのか？｣
｢ああ？いつまでも居るわけねぇだろクソが、｣
｢そうか･･･｣
それ以上言うこともない。
俺は爆豪を見送るとAの元へと戻る。
｢･･･A、爆豪と何を話したんだ？俺は、結構嫉妬深ぇから聞きたい･･･｣
少しばかり冷たい頬を撫でる。
この先、何年、何十年、目を覚まさなくても俺はこうして側に居る。
優しく口付けて甘い香り、柔らかな唇を確かめる。まだ少しの温もりを感じる反面、どこか虚しさを感じた。
｢飯、作ってくる･･･｣
一言を残し、台所のある方へと足を向けた。
その、時だった
『ーーーーー･･･しょうと』
｢！｣
振り返り、駆け寄る。
力のない瞼が揺れ、右手が震えている。そんな手を握ろうと手を伸ばした。
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鈴音(プロフ) - 本当に泣きました。語彙力があってうらやましい限りです。これからも頑張ってください。これからも読みに来ます。 (2018年8月22日 17時) (
レス) id: ec91683ef5 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - 苺デラックスさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて良かったです。爆豪の話口調や性格は探り探りなので、良かったです。最後までありがとうございます。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - うさたまさん» 返信遅くなってごめんなさい！コメントありがとうございます。これかも作品共々よろしくお願いします。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
苺デラックス - お疲れ様でした。私はこれを読んで号泣してティッシュの箱を1箱空にしてしまいました笑本当に泣けます。勝己の幸せになれやと、全部捨てて俺といろよがなくポイントでした。素晴らしい小説だと思います！本当にお疲れ様でした！ (2018年3月30日 0時) (レス) id: e851a42e9b (このIDを非表示/違反報告)
うさたま(プロフ) - 心が浄化されましたありがとうございますこれからも頑張って下さい！！ (2018年3月25日 19時) (レス) id: 2ffea79b62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：秋雨秦 | 作成日時：2017年10月13日 20時
