拾陸 ページ17
爆豪勝己 側
厄介なものを押し付けられた。そう思ったのは最初だけだった。
文句の一つも言わず、家事をしては時々ぼんやりとしていた。そんなことをするくらいなら、そう思って色々な事を教えた。
飲み込みが早かった。
『旦那様はいつ戻るんですかね。』
時々ぼやくそれは恋情か、俺が怖いか。
前者だとすれば現実を伝えるべきだと、思って伝えたが引くことは無い。
母親の死を知らされていない、無知で哀れな人間の一人。
｢やっと来たか。｣
深夜、月が薄気味悪く光を放つ。
泣き疲れて眠っている人のことを伝えず、半分野郎を家に入れる前に門前で止めた。
｢明日にしろ。起こす気か｣
｢･･･｣
｢その様子だと大体分かってんだろ。印まで着けてんだからよ。なぁ？｣
首の後ろに付けられていた印。
あの女に何かあった時、半分野郎に届くようにという監視の印でもある。
(めんどくせぇのに嫁いだな、あいつ、)
｢そこにいろ｣半分野郎を門前で止めておく。
中に入れるほどの中じゃないことは分かってるはずだ。
居間で丸くなって寝ている女の横に座り、肩を揺らす。眉を寄せて呻きながら動く。
｢おい、迎えがーー｣
『！』
迎えがきた。その言葉を聞く前に飛び起きる。
ぐしゃぐしゃになった髪を手で直しながら話す。
｢目ぇ腫れたままになってんぞ。｣
『うん、』
目を擦り、何度も瞬く。
｢この先、どうするかはテメェらで決めろ。一緒にいるにしろ、いないにしろ、分かったか。｣
『うん･･･爆豪様は優しいですね。』
｢あ゛？｣
『知ってました。私が寝ている間、外にいる間、他の妖から守ってくれていたこと･･･とても嬉しかったです。』
つい少し前まで泣いていた奴の面には思えないほど穏やかに微笑む。
｢ーー･･･お前、妖からすればいい餌だ。気をつけろ。｣
『はい。』
芯が図太く、思いの外強情、よく笑う。
この人間にはいい所があるのは確かで、半分野郎が好いたのも分かる所がある。
だから、だろうな
『お世話になりました。』
深々と頭を下げる。
その頭に手を、伸ばしかけて引く。
この人間を好く奴の1人になった今なら、半分野郎のそれでも居続けたいというのも分かる気がした。
『旦那様！』
目を腫らしていることを気に止めること無く、笑顔を向ける。
2人の背が並ぶ。その背を照らす月明かりはまるでそれを喜んでいるように輝いていた。
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鈴音(プロフ) - 本当に泣きました。語彙力があってうらやましい限りです。これからも頑張ってください。これからも読みに来ます。 (2018年8月22日 17時) (
レス) id: ec91683ef5 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - 苺デラックスさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて良かったです。爆豪の話口調や性格は探り探りなので、良かったです。最後までありがとうございます。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - うさたまさん» 返信遅くなってごめんなさい！コメントありがとうございます。これかも作品共々よろしくお願いします。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
苺デラックス - お疲れ様でした。私はこれを読んで号泣してティッシュの箱を1箱空にしてしまいました笑本当に泣けます。勝己の幸せになれやと、全部捨てて俺といろよがなくポイントでした。素晴らしい小説だと思います！本当にお疲れ様でした！ (2018年3月30日 0時) (レス) id: e851a42e9b (このIDを非表示/違反報告)
うさたま(プロフ) - 心が浄化されましたありがとうございますこれからも頑張って下さい！！ (2018年3月25日 19時) (レス) id: 2ffea79b62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：秋雨秦 | 作成日時：2017年10月13日 20時
