拾参 ページ14
｢あ゛！ふざけんな！｣
声を荒らげる一角の鬼。
刺々とまるでイガ栗の様な頭と、その態度。
とてもお顔立ちは良い方なのに言葉遣いも、服も、態度も何もかもが荒れている。
｢テメェの嫁の子守を俺にしろってーー｣
｢料理は出来る。洗濯も掃除も･･･ただ、俺が居ねぇ間だけ守って欲しい。｣
｢んなもん、連れて行けばいい話だろうが！｣
｢･･･貢の日だ、連れていけない｣
｢！｣
貢の日、とは何のことだろうか。
声を荒立てていた鬼は大きく舌打ちをすると、私を睨む。｢来い｣その言葉に食われるのではないかと、びくびくとしてしまう。
｢･･･A、なるべく直ぐに帰る。｣
『･･･』
旦那様の言葉を無視して刺々しい、爆豪という方の方へと行く。
｢頼む。｣
｢･･･早く行け、馬鹿が｣
この時、背を向けていたのに貴方が手を伸ばして、触れなかったこと、あえて何も言わなかったこと分かったんだ。
『ーー･･･』
それなのに振り返ると居なくなっていることにまた拗ねてしまう。
『あの、私はーー』
｢好きにしろ、面倒だ。｣
家の中に入ってしまう爆豪という鬼。
旦那様の家とは違う、当たり前なのにそれが違和感となってしまう。
きっと、悪い鬼ではない。そう思わないといけないことが息苦しい。
『･･･』
早くも10日が経った。私は縁側に座ったまま、ぼんやりと空を見上げていた。
こんな時旦那様は｢お茶飲むか？｣なんて聞いてくるのに、もう手には甘味物とお茶を用意している。
『飲みます。』
｢ん、｣
どこか嬉しそうで、どこか楽しそうな顔をして隣に座っては、庭にある桜の木を二人していつ咲くのかと話す。
時々冗談を交えながら･･･
会話を思い出しているうち無意識に笑ってしまった。
(暫くって、私たちの暫くと同じ、じゃないよね･･･)
暫く、とは鬼の感覚では1年や2年かもしれない。もしかしたら10年とかそんなのかもしれない。
そうなれば私は今よりも姿が変わるはずだ。もしかしたらあの方も変わるかもしれない。不思議とそれが怖く感じる。悲しくも思う。
『･･･最低だ、』
こうして思ってしまう理由は何だろうか。
こうして悩んでしまう理由は何だろう。
もう分かっていた。もう答えが出ていた。離れて気づいた。離れて分かってしまった。好意はないと否定し続けてしまった。
会いたい、今会えるなら私は直ぐにでもこの感情を伝えよう。
春が来る。
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鈴音(プロフ) - 本当に泣きました。語彙力があってうらやましい限りです。これからも頑張ってください。これからも読みに来ます。 (2018年8月22日 17時) (
レス) id: ec91683ef5 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - 苺デラックスさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて良かったです。爆豪の話口調や性格は探り探りなので、良かったです。最後までありがとうございます。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - うさたまさん» 返信遅くなってごめんなさい！コメントありがとうございます。これかも作品共々よろしくお願いします。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
苺デラックス - お疲れ様でした。私はこれを読んで号泣してティッシュの箱を1箱空にしてしまいました笑本当に泣けます。勝己の幸せになれやと、全部捨てて俺といろよがなくポイントでした。素晴らしい小説だと思います！本当にお疲れ様でした！ (2018年3月30日 0時) (レス) id: e851a42e9b (このIDを非表示/違反報告)
うさたま(プロフ) - 心が浄化されましたありがとうございますこれからも頑張って下さい！！ (2018年3月25日 19時) (レス) id: 2ffea79b62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：秋雨秦 | 作成日時：2017年10月13日 20時
