拾弍 ページ13
何にも知らない、
本当に、知らない。
私は怒ってます。
先日、朝ご飯を作る時に中々火が着けられず、旦那様が着けてくれると言ったのですが･･･
なんと、手から火が出たのだ。驚きと、教えてくれなかったことに対して膨れている。
｢A･･･｣
膨れる私の機嫌を取ろうとしているのか、私の周りをウロウロとし、そわそわと落ち着かない素振りでいる。
私はこの鬼に好意がある訳では無い、決して。
だからこそ、本当ならば機嫌が悪くなることなんてないのに･･･今怒っている理由は出てこない。
(意地と言えば、意地かもしれない。)
無駄なことだとは思っている。
思っているのだけれど素直になれない自分がいる。
旦那様を横目に見ると眉を下げて落ち込んでいる。何だかその姿が愛らしく、両親が痛む。反面、意地が悪くなる。
『･･･あの、』
｢？｣
『お願い、と質問に答えてくれたら許します。』
私のふてぶてしい言い方を気にすることなく｢聞く。｣と隣に座る。
縁側から出していた足を引くと、旦那様に手を伸ばす。頬に触れ、瞳を閉じる旦那様に抱きつく。微かなお線香の匂い。
『私は、どんな匂いがしますか？』
微かにぴくりと指が動く。
そして、まるで私を宥めるように手が背中に回る。とん、とん、とん、っと心地のいい手。
｢･･･甘い匂い。金木犀より濃くない、銀木犀の様な微かな匂いがする。｣
『美味しそう？』
｢ああ、とても･･･｣
『食べないんですか？』
｢食べるかも、しれねぇな。｣
嘘じゃない。それだけが今分かる。
食べられかもしれない、という可能に対して自然と怖くはなかった。不思議とそれでもいいかなっと、この鬼ならって思う。
私は随分と人生を放棄したものだ。
『私に対しての恋情で貴方は･･･』
思わず口を噤んだ。
その先聞くことを、続けることを、私が初めておきながら止めてしまう。
静寂の中に冷たい風が戸の隙間から足を冷やす。
｢･･･A、俺は暫く家を空ける。」
『･･･』
｢俺のことを半分野郎って呼ぶ奴がいるんだ･･･そいつの所にいてもらうことになる。良い奴だから、｣
それは、私との距離を置くため？
そんな馬鹿なことを言うことも出来ない私は、ただ強く、強く旦那様の服を握る。
(馬鹿、)
この時熱くなった目元が何を表しているのか、私は考えることも無く、また拗ねることになった。
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鈴音(プロフ) - 本当に泣きました。語彙力があってうらやましい限りです。これからも頑張ってください。これからも読みに来ます。 (2018年8月22日 17時) (
レス) id: ec91683ef5 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - 苺デラックスさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて良かったです。爆豪の話口調や性格は探り探りなので、良かったです。最後までありがとうございます。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - うさたまさん» 返信遅くなってごめんなさい！コメントありがとうございます。これかも作品共々よろしくお願いします。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
苺デラックス - お疲れ様でした。私はこれを読んで号泣してティッシュの箱を1箱空にしてしまいました笑本当に泣けます。勝己の幸せになれやと、全部捨てて俺といろよがなくポイントでした。素晴らしい小説だと思います！本当にお疲れ様でした！ (2018年3月30日 0時) (レス) id: e851a42e9b (このIDを非表示/違反報告)
うさたま(プロフ) - 心が浄化されましたありがとうございますこれからも頑張って下さい！！ (2018年3月25日 19時) (レス) id: 2ffea79b62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：秋雨秦 | 作成日時：2017年10月13日 20時
