拾壱 ページ12
轟焦凍 側
｢幸華んとこのお嬢かぁ･･･可哀想な最後だと皆思ったよ。なんて言っても、都一の金持に結婚を申し込まれるほど美しかったからなぁ。｣
Aの村に週に1度は訪れ、妖が襲わないように見張る。村の人間は最初は俺のことを怪しげに見ていたが、今ではこうして話してくれる。
｢雪与は、お嬢に居なくなられて持病の病が悪化して亡くなった。つい最近の事だ。｣
Aのたった一人の家族、母親が無くなった事実は俺は今も伝えられずにいる。
それに加え、自分勝手にも人間を鬼にする法を探している。以前にもいたという噂からだった。
｢･･･A、｣
隣で寝ているA。
寒いはずなのに畳の上で眠っている。
手を伸ばして頬に触れると冷たくなっている。
Aは村でも慕われ、母の看病に加えて薬代を稼ぐために働く日々。それでも1度も弱音を吐いたことが無いという。
ここでもない。俺の邪魔をしないようにいつも静かにして、家事をこなしている。手はあかぎれているというのに。
(俺は守れているだろうか、)
Aを布団に寝かせると、近くに見えた針を手にする。Aが縫い物をしている時に落としたのだろう。
それを指先に刺す。少し出てきた血を、Aの指に薄く塗るとあかぎれが無くなる。鬼の血は治癒を持つ、一昔前では鬼は不死として人間に捕えられていたと聞かされていた。
｢A、まだ俺が怖いか？｣
Aの甘い匂いが鼻の奥によく届く。
美味そうな匂い、と言えばそうだ。最初の頃は妖がよくこの家を覗いていた。食べたいがために。
俺もいつかは食べてしまうのだろうか。自我を失い、肉を噛み千切り、骨をも貪る。そんな鬼になるかも知れない。
Aの頬を撫でると
『ん〜･･･あ゛っ！』
勢いよく起き上がると｢今は！？｣と辺りをきょろきょろと見渡しながら髪を手櫛で直す。
『い、今すぐご飯作りますね！』
ばたばたと台所に走って行くA。
その後に台所に行くと余程焦っているのか、火が中々着けられず何度も火打石を合わせる。
カチカチカチ！と鳴らせるたびに苦い顔をする。
『木が湿気っているのかなぁ･･･あ、すぐにーー』
｢･･･俺が着ける。｣
『お願い･･･！』
火を左手から出すと口を開けたまま固まってしまうA。
｢あ、教えてなかったな。｣
『･･･っ〜！知りません！』
頬を膨らませて俺の背を押す。
どうやら怒らせてしまったらしい。
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鈴音(プロフ) - 本当に泣きました。語彙力があってうらやましい限りです。これからも頑張ってください。これからも読みに来ます。 (2018年8月22日 17時) (
レス) id: ec91683ef5 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - 苺デラックスさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて良かったです。爆豪の話口調や性格は探り探りなので、良かったです。最後までありがとうございます。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - うさたまさん» 返信遅くなってごめんなさい！コメントありがとうございます。これかも作品共々よろしくお願いします。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
苺デラックス - お疲れ様でした。私はこれを読んで号泣してティッシュの箱を1箱空にしてしまいました笑本当に泣けます。勝己の幸せになれやと、全部捨てて俺といろよがなくポイントでした。素晴らしい小説だと思います！本当にお疲れ様でした！ (2018年3月30日 0時) (レス) id: e851a42e9b (このIDを非表示/違反報告)
うさたま(プロフ) - 心が浄化されましたありがとうございますこれからも頑張って下さい！！ (2018年3月25日 19時) (レス) id: 2ffea79b62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：秋雨秦 | 作成日時：2017年10月13日 20時
