拾 ページ11
『はぁ･･･』
真っ赤になった手に息をかけ、何度も手を擦り合わせる。冬の芋洗いは手に堪える。口に手を当てながら当たりを見渡す。
この一週で雪は積もり、外は白と灰色に染まっている。銀色の世という者も居たけれど、私にはそんな発想はないようだ。
『よし！』
芋の入った樽を脇に抱えて立ち上がると
気合いの一声を入れて振り返った。
『わっ！って、何してるんです！？』
ガラス戸にもたれながら眠そうに目を擦る旦那様に驚きながら、まだ寝巻き姿で、急いで縁側に置いている自分の羽織を肩にかける。
髪には寝癖もついている。
『風邪引きますよ･･･』
｢ん、｣
まだ眠たいのだろうか、何度も瞬きをする。
初めて見るふらふらと覚束無い足取りに、芋を急いで台所に置くと走って旦那様の元に戻る。
布団を膝までかけ、頭を前後させている。
旦那様を寝かせ、布団をかけると散らかった書物に手を伸ばす。
『なんで起きたんですか、』
｢･･･A、｣
『はい？』
服を、引かれる。
『･･･、･･･どうしたのですか？こんなに寝るなんて、夜更かしのし過ぎですか？』
｢･･･｣
近づくと私の手を握る。温かい手だ。
最近、旦那様は何かを調べている。外に出ては書物を大量に持ち帰っては篭もり、また出るを繰り返している。
書物を1度見たものの読めず、それは妖の字だと言う。
(何をそんなに熱心に･･･)
私はこの鬼のことを何も知らない。
家にいない間何をして、どこに行っているのか。
いつ、どこで生まれて育ったのか。
火傷の痕のこと、家族のこと、全く知らない。
この鬼も私のことを知らない、聞きもしない。
握られている手をそっと離し、布団に入れる。静かな部屋、男だと言うのにいびきをかくことも、布団を蹴ることもない。
品のある方だ。いろいろな妖にも慕われている。
『･･･私は、何ですか？』
寝ている相手に訪ねても、返事がないことくらい分かっている。
隣に、畳の上に寝転ぶと旦那様の顔を見る。
(私も鬼なら同じ目線に立てたのに、)
有りもしないことを思う。
少しして瞼が重くなり、
気づくと私も眠ってしまった。
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鈴音(プロフ) - 本当に泣きました。語彙力があってうらやましい限りです。これからも頑張ってください。これからも読みに来ます。 (2018年8月22日 17時) (
レス) id: ec91683ef5 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - 苺デラックスさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて良かったです。爆豪の話口調や性格は探り探りなので、良かったです。最後までありがとうございます。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨秦(プロフ) - うさたまさん» 返信遅くなってごめんなさい！コメントありがとうございます。これかも作品共々よろしくお願いします。 (2018年3月30日 6時) (レス) id: 83d660fda4 (このIDを非表示/違反報告)
苺デラックス - お疲れ様でした。私はこれを読んで号泣してティッシュの箱を1箱空にしてしまいました笑本当に泣けます。勝己の幸せになれやと、全部捨てて俺といろよがなくポイントでした。素晴らしい小説だと思います！本当にお疲れ様でした！ (2018年3月30日 0時) (レス) id: e851a42e9b (このIDを非表示/違反報告)
うさたま(プロフ) - 心が浄化されましたありがとうございますこれからも頑張って下さい！！ (2018年3月25日 19時) (レス) id: 2ffea79b62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：秋雨秦 | 作成日時：2017年10月13日 20時
