クロユリの蜜に漬け込んで、3*nb ページ6
翌日は蓮を佐久間に預け、涼太と警察に向かった。
詳しく話を聞いてはくれたが、証拠が不充分すぎるので逮捕まではできないとの事。
「証拠ってなんですか？昨日は公共の場で襲われかけたんです、防犯カメラもあるでしょ？」
俺よりも涼太の方が怒ってて、現状は何も出来ないと言う警察に食ってかかる。
話を聞いていたおじさんはパソコンをいじると、俺たちに画面を向けた。
「…これ、昨日のカメラ映像ね。貴方の後にトイレへ入った男性は確認できます。その後旦那さんが走ってきて、入れ違いで男性が出てくる…カメラではここまでしか確認できないんですよ。トイレ内にはカメラないからね」
「それじゃダメなんですか？昨日以外にも、翔太はたくさん被害を受けてるのに…！？」
「涼太、」
「誤認逮捕が問題視されるから、こちらも迂闊に動けないんですよ。…出来ることと言ったら、ご自宅周辺の見回りを強化するぐらいかなぁ」
「…そんな、……翔太はこんなに…」
涼太はひどく顔を歪めながら、俺の目の下にすっかり住み着いたクマを見た。
悔しそうに唇を噛む涼太に少しだけ微笑んで、おじさんにも頭を下げた。
「…今はそれで大丈夫です、よろしくお願いします」
「ごめんね、すぐ力になれなくて。何かあったら、すぐ警察に通報してくださいね」
「はい、ありがとうございます」
未だ眉間に皺を寄せた涼太の手を引き、おじさんに再度頭を下げてから警察署を後にした。
少し雪が降り始めた空を見上げた涼太は、俺の乱雑に巻かれたマフラーをきっちり結び直しながら口を開く。
「…遅いよ」
「ん？」
「何かあってからじゃ、遅いんだよ……これ以上、翔太が傷つくのなんて耐えられない。だから警察に来たのに、結局何も変わらない…」
「…涼太、」
「悔しいよ、翔太。…俺じゃ何の力にもなれない」
「そんなことっ…」
「お願い、もう……つらい思いしないで…」
そっと抱きしめてくれる肩は震えていて、思わず目頭が熱くなる。
俺も背中に腕を回せば、普段滅多に泣かない涼太が鼻をすする声が聞こえて…どうしようもなく息が詰まった。
俺だってもう、苦しみたくないよ。
涼太と蓮と一緒に、楽しく毎日を過ごしたい。
そんなに難しくないはずなのに、全然簡単じゃない。
…せめて涼太と蓮には、こんな悲しい顔させたくなかったのに。
「……ごめん、」
絞り出した声はギリギリ涼太の耳に届き、落ちた雪と共にゆっくり溶けて消えていった。
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谷森山(プロフ) - まりそうさん» コメントありがとうございます！あんまり楽しいお話ではない物が続いて申し訳ありません🥲今後のお話は楽しさだけでない物も多くなってきますので、御理解いただけたら幸いです。よろしくお願いいたします🥺 (4月17日 0時) (
レス) id: 0b5df8b91d (このIDを非表示/違反報告)
まりそう - いつも楽しく読ませていただいてます。とっても癒されてます。更新されるお話を楽しみにしています。3家族のぼのぼのとしたにぎやかな楽しいあたたかいお話しがみたいです。 (4月14日 16時) (レス) id: 3b49c20ebb (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - Blueい。さん» コメントありがとうございます！平仮名ばかりで読みづらかったと思いますが、感動していただけて嬉しい限りです🥺✨今後もよろしくお願いいたします🥰 (2月17日 6時) (レス) id: 0b5df8b91d (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - まりそうさん» コメントありがとうございます！お気に召していただけて何よりです🥰結婚式のお話は、構成上割と先になる予定です。お待たせして申し訳ありません💦御理解いただけますと幸いです🙏 (2月17日 6時) (レス) id: 0b5df8b91d (このIDを非表示/違反報告)
Blueい。(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます！蓮くんの逆サプライズが本当にいいお話すぎてコメントさせていただきました。小説を読んでて初めて泣きました…！笑 これからも応援してます！！ (2月16日 23時) (レス) @page28 id: 173db89271 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：谷森山
| 作成日時：2024年1月15日 10時
