胸ポケットには千日紅を【雪男】

俺の王子に白馬は不要！4*iw ページ43

何発殴ったかわからないが、とりあえず男をボコボコにして警察へ放り投げてきた。

無事帰宅してお風呂に入って、夕飯を食べ終わってもラウはふっかから離れない。


「まっま！や！」


…たぶん、ママが怖い思いしたの気付いてるんだよな。

まだ赤ちゃんだけど立派な男の子じゃん、ママを守りたいんだよ。さすが俺の息子。

めちゃくちゃ眠そうに瞬きしながらも、ふっかにしがみついて離れないラウ。

さすがにそろそろ寝かせようかな。


「…ふっか、川の字作戦にしよ」

「ラジャ」





川の字作戦。

文字通りラウを挟んだ川の字でベッドに寝て、俺かふっかのどちらかが絵本を読む作戦。

今日はラウがお気に入りの、白雪姫を俺が読むことにした。


「おうじさまがキスをすると、しらゆきひめは…」

「照、とっくに聞いてないよ」


ちいさな寝息を立てるラウのまるいおでこを、ふっかの細い指がやさしく撫でる。

愛おしそうな目でラウを見つめるのが、俺にとってはたまらなく愛しい。

当たり前に感じていたこの幸せを、失わなくて済んだという実感で涙が出そう。


「…なに？どしたの」

「いや、なんか……ふっか、すき」

「存じ上げておりますぅ〜」

「はぐらかすな」


ぎゅっと抱きしめれば、ラウのやわらかい頬と、ふっかの細い肩に安心する。

そのままふっかの頬にキスをすれば、控えめな笑い声が聞こえた。


「…なんで笑うの」

「や、ごめん。ちょうど照が持ってる絵本がキスしてるページだったから、なんか面白くて」

「唇の方がよかった？」

「え？いや、そういうんじゃ…ん、っ」



さんざんお風呂で洗ったけど、やっぱり俺以外の男がふっかに触ったのは気に入らない。

ふっかはもともと腰に爆弾抱えてるし、ラウが産まれてからはあんまり体を重ねてなかったんだけど、今日はちゃんとした理由がある。


「よっし…移動しまーす」

「あはは！岩本タクシー！」


絵本を本棚に戻したら、俺の姫を抱き上げてリビングへ。

やさしく丁寧に、たっぷり愛し合いながら夜を越した。










「てるにぃ、みてみて！」


落ちてきた桜を手のひらに収めた康二が、嬉しそうに駆け寄ってきた。

新しく佐久間に買ってもらったらしい靴は、既に泥だらけ。


「きゃーい！」


春風に舞う桜を追いかける康二と、ピンクの花吹雪にご機嫌なラウ。

なんか兄弟みたいでかわいい。




(…兄弟いいな。ふっかの腰と要相談だな)


いや、無理させるのはやめとこ。大事に、大事にね。

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