検索窓
今日:278 hit、昨日:417 hit、合計:170,187 hit

17時、延びる影の黒。1*sk ページ34

「いやや、いっしょにねるぅ!」

「もう…どうしたの急に?」


大粒の涙を零しながら、阿部ちゃんのお腹に引っ付いて離れない康二。

いつもはひとりで寝るんだけど、今日は夕方からずっと阿部ちゃんのくっつき虫になってる。


「…佐久間さん、」

「いいんじゃない?たまには康二と寝てあげなよ。俺康二の布団で寝るし」


というのも今日、康二を保育園に迎えに行った時から始まってた。






「さっくぅ〜ん!」

「コォジィ!オカエリィ!」


保育園の玄関から元気に飛び出してきた康二を抱きしめて、手をつないで帰ってた。

車で迎えに来ても良かったんだけど、天気良い日は歩いてのんびり帰りたいなって。

康二も元気いっぱいだし、できるだけお迎えは車を使わないようにしてる。



「そんでな、そんときな、」

「うん。………うん?そん時どうしたの?」

「………」

「…康二?」


ウキウキで保育園でのことを話してた康二が、急に固まった。

歩みも止まったので目線を合わせようとしたんだけど、康二は前を見据えたままポカンとしてる。

チラッとそっちを見ると、ひとりの男性が歩いてきた。

長めの髪、口周りに髭を生やして、夕陽が眩しいからかサングラスを掛けている。

康二はぎゅっと俺の手を握ると、突然男性に向かって口を開いた。





「あべちゃんにさわらんといて!!!」





「…へ?俺?」

「康二!?す、すみません!」

「いややぁ!やめてやぁ!うわぁぁあん!!」

「な、なんだこのガキ!?」


男性の足をポコスカ殴り出したと思ったら大泣き。

慌てて引き剥がして、頭を下げてダッシュで帰ってきた。

…そういえば前も、サングラス掛けた髭の男性にガン飛ばしてたっけ。





「…康二、ああいう男の人が怖いの?」


阿部ちゃんは学校終わりにそのままバイトへ行ったので、家には俺たちだけ。

泣きながらも手洗いうがいはしっかりした康二の頭を撫で、康二の好きなグミを渡した。

鼻を啜りながらグミを頬張った康二は、ちょっと考えてからうるうるした目で俺を見る。


「…おじさんたちな、あべちゃんいじめるん」

「……施設の時?」

「…うん。おばさんとな、にやにやしながら…でっかいおとこのひと、なんにんもおってん」


おばさんっていうのは…あの女か。

正直これ以上聞いたら胸糞悪いだろうなって嫌でもわかったんだけど、聞かなきゃいけない気がした。



あの女が突然態度を変えた理由が、関係あるんじゃないかって思ったから。

17時、延びる影の黒。2*sk→←抱えきれない幸せも。5*sk



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (227 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1147人がお気に入り
設定タグ:skab , dtnb , iwfk
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

谷森山(プロフ) - まりそうさん» コメントありがとうございます!あんまり楽しいお話ではない物が続いて申し訳ありません🥲今後のお話は楽しさだけでない物も多くなってきますので、御理解いただけたら幸いです。よろしくお願いいたします🥺 (4月17日 0時) (レス) id: 0b5df8b91d (このIDを非表示/違反報告)
まりそう - いつも楽しく読ませていただいてます。とっても癒されてます。更新されるお話を楽しみにしています。3家族のぼのぼのとしたにぎやかな楽しいあたたかいお話しがみたいです。 (4月14日 16時) (レス) id: 3b49c20ebb (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - Blueい。さん» コメントありがとうございます!平仮名ばかりで読みづらかったと思いますが、感動していただけて嬉しい限りです🥺✨今後もよろしくお願いいたします🥰 (2月17日 6時) (レス) id: 0b5df8b91d (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - まりそうさん» コメントありがとうございます!お気に召していただけて何よりです🥰結婚式のお話は、構成上割と先になる予定です。お待たせして申し訳ありません💦御理解いただけますと幸いです🙏 (2月17日 6時) (レス) id: 0b5df8b91d (このIDを非表示/違反報告)
Blueい。(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます!蓮くんの逆サプライズが本当にいいお話すぎてコメントさせていただきました。小説を読んでて初めて泣きました…!笑 これからも応援してます!! (2月16日 23時) (レス) @page28 id: 173db89271 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:谷森山 | 作成日時:2024年1月15日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。