両手のちいさなぬくもりで。2*ab ページ31
慌てて立ち上がったのと同時に、ヒーローショーは大きな拍手とともに閉幕。
ぞろぞろと退散していくお客さんたちに流されないよう、しっかり康二の手を握った。
「あべちゃん、どないしたん？」
「康二、康二も蓮くん探して！」
「…れん、おらんの！？れーーん！！」
「蓮くん！！」
「ぁい、あぅぁ〜！」
ずっと大人しかったラウも、俺たちがおおきな声を出すと何やら叫び始めた。
親子連れが多いし、3歳ぐらいの男の子なんてたくさん居るから、蓮くんが居ても見落としそう。
せめて康二とは絶対はぐれないよう、つないだ手を何度も確認した。
「…はぁ、はぁっ」
「ぅ、…れん、おらんなぁ…」
「ぁぅぶぅ〜！」
「どうしよう…宮舘さんと渡辺さんになんて話せば…」
軽く30分は走ったと思う。
賑わっていた公園はすっかり閑散としていて、ヒーローショーに使われていたセットはみるみる解体されていた。
どれだけ時間が経っても見つからない蓮くんに、だんだん不安で涙が出そう。
…もし、迷子じゃなくて誘拐だったら？
俺が目を離したばっかりに、蓮くんがこわい思いをしてるんだとしたら…
「…っ、」
「阿部ちゃん？まだ居たんだ」
「…おい、どうした阿部？蓮は？」
「…ぁ、」
やさしく肩を叩かれ、振り返れば普段着に着替えた岩本さんと深澤さんが居た。
思わず流れてしまった涙と、空っぽの左手を見つけたふたりは、1度顔を見合わせて口を開く。
「蓮、迷子になっちゃったか？」
「とりあえずラウは預かる。ありがとな、重かっただろ」
「…いえ、俺はなにも…っ」
「よしよし。阿部ちゃんは悪くねぇぞ」
「ふっか、俺一応佐久間ん家と館の家まで見てくる。自力で帰ろうとしてるかもしれないし」
「ん、ラウもらうわ。…阿部ちゃん、まず落ち着こ。翔太たちへの連絡は俺がするから、佐久間に連絡できる？」
「…っ、はい。すみません、っ」
パニックの俺とは違い、岩本さんも深澤さんもすごく冷静に解決策を考えてくれた。
こういうところ、大人だなぁって尊敬する。
ラウを抱っこ紐ごと深澤さんにパスして、ずっとキョロキョロしてる康二を1度抱きしめた。
「…あべちゃん？」
「康二…俺、情けないよぉ…」
「だいじょぶやで、ぜったいだいじょうぶや！」
ぽつりと零れた弱音ごと、康二はちいさな手で一生懸命撫でてくれた。
その撫で方がなんとなく佐久間さんを思い出して、…本当の親子に近付いてるのかなってふと思った。
両手のちいさなぬくもりで。3*ab→←両手のちいさなぬくもりで。1*ab
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 824人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
谷森山(プロフ) - サクラサクさん» コメントありがとうございます！楽しんでいただけてるようで何よりです😇❤️現在続編を制作中ですので、少々お待ちいただけますと幸いです！よろしくお願いいたします🥺✨ (1月14日 22時) (
レス) id: 0b5df8b91d (このIDを非表示/違反報告)
サクラサク(プロフ) - 初めまして 世界観に入り込んで泣きながら読みました。みんなが幸せになりますように！続きまってます。 (1月14日 1時) (レス) @page50 id: 8091bfce66 (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - ハルさん» コメントありがとうございます！子供たちの幸せを願っていただき嬉しいです( ;ᯅ; )❤️つらいことも家族で一緒に乗り越えて、逞しくやさしい子に育ってくれるといいですよね( ¨̮ )♡ (12月21日 10時) (レス) id: 0b5df8b91d (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 良かった、、、、もう入り込みすぎて 子供たちに何かあったら、と心臓痛くなる毎日です(泣) あぁどうか幸せになりますように (12月20日 20時) (レス) @page35 id: af4e907359 (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - にこさん» コメントありがとうございます！宮舘家を見守ってくださり嬉しいですˊᵕˋたっぷり愛情注いでくれると思いますので、今後もお付き合いくださると幸いです( ¨̮ )︎︎♡ (11月22日 10時) (レス) id: 0b5df8b91d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：谷森山
| 作成日時：2023年11月1日 1時
