どちらにしようかな？1*sk ページ4
帰ってからも震えが止まらない阿部ちゃんの背中を、康二のちいさな手が何度もさすっている。
阿部ちゃんはありがとう、大丈夫と微笑みかけてるけど、全然大丈夫じゃないことぐらい康二もお見通しみたいだ。
そんなふたりを横目に、運転してて確認できてなかった携帯を見る。
(…不在着信3件？)
すべて同じ番号から。留守電は無し。
見知らぬ番号に首を傾げながら、スマホの検索機能で番号を調べてみた。
(…ここって、)
折り返したけど、相手の内容をただぼんやりと聞くしかできなかった。
電話を終えた俺の足に、康二がきゅっとしがみつく。
「さっくん？」
不安そうに見上げてくる瞳には、同じく不安そうな俺が映ってる。
少し視線をずらせば、まだソファで蹲ってる阿部ちゃんが目に入った。
「……康二のお兄さん、目を覚ましたって」
「……え？」
「病院から連絡あった。今日の午前中に目を覚まして、現実を受け入れるのに時間がかかってたみたいだけど…康二に会いたがってるって。…施設に入ったって聞いて、退院の手続き急いでるみたい」
「……それって、」
顔を上げた阿部ちゃんの瞳から、またぽろりと涙が落ちる。
康二は俺たちの顔を交互に見ながら、状況が理解できていないみたい。
「…退院したら、康二を引き取るってことですか？」
時計の秒針が、やたらとうるさく感じた。
翌日、康二を連れてお兄さんの病院へ来た。
阿部ちゃんはバイトを入れてしまったとのことで、俺と康二だけ。
受付を済ませて病室の前に来ても、康二は何も理解できていないようだった。
手を繋いだまま、軽くドアをノックする。
ちょっと鼻にかかったような声で、どうぞと返された。
「…失礼します」
ドアを開ければ、やせ細った男性が点滴をつけたまま、こちらを見て目をまるくした。
「…康二！」
「……う？」
「覚えてへんか、兄ちゃんやで康二」
「にーちゃ？……にーちゃんや！っうわぁああぁ〜！！」
耳が破壊されるレベルの、おおきな泣き声。
康二は俺の手を離すと、お兄さんに両手を伸ばして駆け寄った。
お兄さんも涙を溢れさせながら、ちいさな体を抱き留めた。
「康二！…大きなったなぁ！」
「にぃちゃぁああぁ！！かぁちゃんがぁぁっ、とぉちゃんがあぁあぁあ〜！！！！」
「…っ、」
思わず俺の視界も滲む。
ちいさな康二には、おおきすぎるトラウマ。
今日、阿部ちゃんが居なくて良かったかもしれない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 824人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
谷森山(プロフ) - サクラサクさん» コメントありがとうございます！楽しんでいただけてるようで何よりです😇❤️現在続編を制作中ですので、少々お待ちいただけますと幸いです！よろしくお願いいたします🥺✨ (1月14日 22時) (
レス) id: 0b5df8b91d (このIDを非表示/違反報告)
サクラサク(プロフ) - 初めまして 世界観に入り込んで泣きながら読みました。みんなが幸せになりますように！続きまってます。 (1月14日 1時) (レス) @page50 id: 8091bfce66 (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - ハルさん» コメントありがとうございます！子供たちの幸せを願っていただき嬉しいです( ;ᯅ; )❤️つらいことも家族で一緒に乗り越えて、逞しくやさしい子に育ってくれるといいですよね( ¨̮ )♡ (12月21日 10時) (レス) id: 0b5df8b91d (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 良かった、、、、もう入り込みすぎて 子供たちに何かあったら、と心臓痛くなる毎日です(泣) あぁどうか幸せになりますように (12月20日 20時) (レス) @page35 id: af4e907359 (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - にこさん» コメントありがとうございます！宮舘家を見守ってくださり嬉しいですˊᵕˋたっぷり愛情注いでくれると思いますので、今後もお付き合いくださると幸いです( ¨̮ )︎︎♡ (11月22日 10時) (レス) id: 0b5df8b91d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：谷森山
| 作成日時：2023年11月1日 1時
