その手のひらは魔法みたいに。3*ab ページ28
「あーべちゃん」
やさしい声に目を開けると、佐久間さんが俺の髪を撫でながらベッド脇にしゃがみ込んでいた。
熱が高くて朦朧とする意識の中でも、佐久間さんの声は安心するし、ほんのり冷たい手のひらは心地良い。
「お昼の時間だけど、何か食べれそう？」
体を起こそうとして初めて、自分の目から流れる涙に気付いた。
確かに悪い夢は見てたけど、いくら高熱だからって泣くなんて…恥ずかしい。
慌てて顔を隠すように布団に潜れば、佐久間さんはニャハッと笑う。
「今更恥ずかしがることないじゃん〜。もっと恥ずかしいところいっぱい見てるんだし痛痛痛痛痛痛ごめんごめんってちょこっとだけつねるのやめて」
食べないと治らないっていうのはわかってても、なかなか喉を通らないもんだ。
食べれそうならと佐久間さんのお弁当に入ってたウインナーを1本もらったんだけど、油のにおいと皮の歯ごたえに気持ち悪くなってしまって。
結局くだものが入ったゼリーをゆっくり食べた。
病院で処方された薬は苦そうな粉薬だったけど、鼻が詰まってるおかげでさほど苦味を感じなかった。
「…寝れそうかな？」
横になってる間、ずっと髪を撫でてくれる佐久間さん。
幾分ラクになってる気がして、その心地良さに目を閉じる。
「なんか欲しいものある？」
「…ん、いえ。とくに、」
「おっけ。じゃあ俺リビング居るから、何かあったらスマホ鳴らして」
そっと離れてしまう手。
なんだか寂しくなっちゃって、
「…っ、」
その袖口をキュッと掴んだ。
「…どしたの？俺ここに居た方がいい？」
「あ、いや、うつっちゃうから…」
「…じゃあ、うつしてもらおっかな？」
「へ？…ぅわ！？」
いたずらな笑顔で、俺に覆い被さる佐久間さん。
キスされそうになったから、慌てて手で壁を作った。
「だっ、だめ！だめです！」
「だめなの？阿部ちゃんの風邪ならうつされたいんだけどなぁ」
「佐久間さんがうつったら、康二のお世話ができなくなる、から！」
「……たしかに、そりゃそうだ」
両手首を捕まえられて、唇が触れ合うまであと少しのところ。
我に返ったように、佐久間さんは俺の上から撤退した。
「ごめん、しんどいのに。重かったでしょ」
「…い、いえ……でも、」
そもそも引き止めたのは俺の方。
もう一度その手のひらを握ると、そっと握り返してくれた。
「…ちょっとだけ、撫でて欲しいです…」
「……へへ。りょーかいっ」
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谷森山(プロフ) - サクラサクさん» コメントありがとうございます！楽しんでいただけてるようで何よりです😇❤️現在続編を制作中ですので、少々お待ちいただけますと幸いです！よろしくお願いいたします🥺✨ (1月14日 22時) (
レス) id: 0b5df8b91d (このIDを非表示/違反報告)
サクラサク(プロフ) - 初めまして 世界観に入り込んで泣きながら読みました。みんなが幸せになりますように！続きまってます。 (1月14日 1時) (レス) @page50 id: 8091bfce66 (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - ハルさん» コメントありがとうございます！子供たちの幸せを願っていただき嬉しいです( ;ᯅ; )❤️つらいことも家族で一緒に乗り越えて、逞しくやさしい子に育ってくれるといいですよね( ¨̮ )♡ (12月21日 10時) (レス) id: 0b5df8b91d (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 良かった、、、、もう入り込みすぎて 子供たちに何かあったら、と心臓痛くなる毎日です(泣) あぁどうか幸せになりますように (12月20日 20時) (レス) @page35 id: af4e907359 (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - にこさん» コメントありがとうございます！宮舘家を見守ってくださり嬉しいですˊᵕˋたっぷり愛情注いでくれると思いますので、今後もお付き合いくださると幸いです( ¨̮ )︎︎♡ (11月22日 10時) (レス) id: 0b5df8b91d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：谷森山
| 作成日時：2023年11月1日 1時
