検索窓
今日:7 hit、昨日:6 hit、合計:137,266 hit

森の中*1 ページ6

「ん…」


藤ヶ谷さんが目を覚ますと、木々の間から朝日が零れていました。

うっかり寝てしまったのかと起きあがろうとすれば、肩に乗せたままの北山さんがずり落ちそうになります。

慌てて頭を支えて、芝の上に自らの上着を置いた上に北山さんの頭をそっと乗せた藤ヶ谷さん。

寝息を立てる北山さんを見つめて微笑むと、ふと振り返り立ち上がりました。


「…玉、君は一体何者なの…?」


起きる気配もないほどぐっすり眠る玉森さんの髪を、ゆっくり撫でてみました。

だいぶ顔色の良くなった玉森さんは、本当に綺麗な顔立ちをしています。

藤ヶ谷さんはその寝顔に、少しだけ見惚れていました。


「…なにしてんの」

「わ!?びっくりした」


突然後ろから低い声が聞こえ、藤ヶ谷さんは飛び跳ねて振り返ります。

見ると北山さんがゆっくりと起き上がりながら、藤ヶ谷さんを睨むように見ていました。


「おはよ北山。よく眠れた?」

「…おかげさまで。……今、なにしてたの?」

「なにって……」

「ん…」


藤ヶ谷さんが返答に詰まった時、玉森さんがゆっくりと瞼を上げました。

ふたりは慌てて玉森さんに駆け寄ります。


「玉、大丈夫か?」


玉森さんは静かに瞬きをすると、優しく微笑んで頷きます。


「…ん、ふたりとも、助けてくれてありがと…」


控えめに染み渡るような声に、ふたりは顔を見合わせて安心したように笑いました。

起きあがろうとする玉森さんの背中を、北山さんが優しく支えます。


「…ごめんなさい、ふたりとも。突然助けてくれなんて…迷惑だったよね…」

「そんなことないよ。あんな目の前でドンパチやられてたら、助けるのが普通だって」

「…でも、ちゃんとした理由は聞きてぇな」


ちょっぴり真剣なトーンを出した北山さん。

玉森さんはその声を汲むように真剣な眼差しを見せると、静かに頷きます。



「…俺、両親が神職についてて、それが理由かはわからないけど…小さい頃から神様のお言葉が聞こえてたんだ。昔はそれが特別だって知らなくて、みんなに聞こえてると思ってた。…でも、みんなには聞こえないってわかってから…俺は神みたいな立ち位置にされた」


そして玉森さんの噂はたちまち広がり、ぜひ神のお声を聞かせて欲しいという町や村が後を絶たず、玉森さんは旅をする事になったのです。


「最初は楽しかった。俺が神のお声を代弁するだけで、みんなが喜んでくれたから…」


でも、現実は嬉しい事だけではなかったのです。

森の中*2→←始まりの街*4



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (161 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
408人がお気に入り
設定タグ:藤北 , 宮玉
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

桐山ななみ(プロフ) - こんにちは!とても面白いです!キスマイのファンの私にたまらなく好きです!特に悪役のみやっちにはもうドキドキが止まらなくハマり興奮しました笑最後どうなるか気になります!続きを待っております! (10月3日 8時) (レス) id: 034e0a3f60 (このIDを非表示/違反報告)
なめこ(プロフ) - すみません(汗)今気づいたのですが「もしもし、あなた」の作者さんなんですね?!私、「もしもし、あなた」が(ほかの作者さんには失礼ですが)占ツクの中で一番素晴らしい小説だと信じております!そちらの更新も楽しみにお待ちしております♪(´ε` ) (2017年1月8日 9時) (レス) id: c04f163397 (このIDを非表示/違反報告)
なめこ(プロフ) - 千ちゃん(泣)涙が止まりません(←ガチです。)なんて優しいの?・・・作者様の文才に感動!素晴らしいですね(((o(*゚▽゚*)o)))更新頑張ってください(=゚ω゚)ノ (2017年1月8日 8時) (レス) id: c04f163397 (このIDを非表示/違反報告)
キスマイ(プロフ) - こんばんは!設定にとても惹きつけられ夢中で読ませて頂きました。宮田くんには闇の部分を感じることがあったりしていたので、過去も含め魔王ミヤタから目が離せません。これからもとても楽しみにしています。 (2016年6月11日 20時) (レス) id: ecf182a48a (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - 七星さん» うふふ、宮玉要素はまだ焦らしますよ〜(笑)宮田さんはもう少し後に出てきますので、それまでどうなるのか予想してみてくださいね(*^o^*)笑 (2016年2月1日 13時) (レス) id: 2433512750 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:谷森山 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2016年1月4日 4時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。