選択の街*3 ページ12
「申し訳ないのですが、どなたか力のある方をお一人お借りできませんでしょうか?」
申し訳なさそうに扉を開けたウェイトレス。
北山さんと玉森さんは、同時に藤ヶ谷さんを見つめました。
「あっ、俺行きます」
「申し訳ありません、助かります」
藤ヶ谷さんがウェイトレスについて部屋を出ると、北山さんはふと玉森さんを見つめます。
その真剣な眼差しに気付くと、玉森さんは首を傾げて少しだけ微笑みました。
「…玉、俺も…やっぱりおかしいと思うぜ」
「えっ?」
「この宿屋だよ。もう片方が15000円だろ?…こっちより高級な一泊なんて考えられない。たぶん…何かあると思うんだ」
さっきまでとは違う、根拠のある力強い声に、玉森さんは深く頷きます。
ふたりは藤ヶ谷さんの出て行った扉を眺めると、ちょっとした緊張感に包まれたのです。
「…藤ヶ谷、大丈夫かな…」
ぽつりと呟いた北山さんの声。
かき消すように、扉をノックする音が聞こえました。
「「……っ」」
ふたりは同時に息を呑みます。
扉の向こう側から溢れる雰囲気が、なんだか凄く嫌な予感だったからです。
「…玉、下がって」
北山さんは片手で玉森さんを庇うように前へ出ると、ゆっくり扉に近付きます。
もう一度ノックする音が聞こえた時、北山さんは首から下げた真っ赤な魔術石を握りしめて、臨戦態勢を取りました。
「…誰?」
「遅くに申し訳ありません、お部屋の窓に異常がないか点検にまいりました」
「…いや、大丈夫です」
「細かい点検箇所もありますので、少しだけよろしいでしょうか?」
北山さんは少し考えると、ゆっくり扉を開けます。
工具を持ったウェイトレスがふたり、頭を下げて部屋に入ってきました。
「…問題なさそうですね」
ウェイトレスたちは窓をしばらく点検すると、北山さんと玉森さんにそれぞれ紙を差し出しました。
「この欄に、ちゃんと点検しましたよっていうサインをいただきたいのですが…」
「…あぁ…」
ふたりが紙を受け取り、ペン先を付けた時。
「ぅぐっ!!?」
突然北山さんの口元が覆われ、工具に見せかけたスタンガンを背中に当てられました。
駆け巡る電流に暴れる間もなく、北山さんは気を失ってしまいます。
「!?みつ…っ!ぅ…!!」
玉森さんも同様に、強引な眠りにつかされました。
倒れ込んだふたりを抱えると、ウェイトレスたちは無言で部屋を去っていきます。
その動作は、どこか機械的に見えました。
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桐山ななみ(プロフ) - こんにちは!とても面白いです!キスマイのファンの私にたまらなく好きです!特に悪役のみやっちにはもうドキドキが止まらなくハマり興奮しました笑最後どうなるか気になります!続きを待っております! (10月3日 8時) (レス) id: 034e0a3f60 (このIDを非表示/違反報告)
なめこ(プロフ) - すみません(汗)今気づいたのですが「もしもし、あなた」の作者さんなんですね?!私、「もしもし、あなた」が(ほかの作者さんには失礼ですが)占ツクの中で一番素晴らしい小説だと信じております!そちらの更新も楽しみにお待ちしております♪(´ε` ) (2017年1月8日 9時) (レス) id: c04f163397 (このIDを非表示/違反報告)
なめこ(プロフ) - 千ちゃん(泣)涙が止まりません(←ガチです。)なんて優しいの?・・・作者様の文才に感動!素晴らしいですね(((o(*゚▽゚*)o)))更新頑張ってください(=゚ω゚)ノ (2017年1月8日 8時) (レス) id: c04f163397 (このIDを非表示/違反報告)
キスマイ(プロフ) - こんばんは!設定にとても惹きつけられ夢中で読ませて頂きました。宮田くんには闇の部分を感じることがあったりしていたので、過去も含め魔王ミヤタから目が離せません。これからもとても楽しみにしています。 (2016年6月11日 20時) (レス) id: ecf182a48a (このIDを非表示/違反報告)
谷森山(プロフ) - 七星さん» うふふ、宮玉要素はまだ焦らしますよ〜(笑)宮田さんはもう少し後に出てきますので、それまでどうなるのか予想してみてくださいね(*^o^*)笑 (2016年2月1日 13時) (レス) id: 2433512750 (このIDを非表示/違反報告)
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