あにまる日誌二冊目！

あなたへ贈るﾋﾞﾀｰﾁｮｺﾚｰﾄ*T ページ43

『たま、きょうは、ばれたんいん？っていうんだぞ！』

『きたやま、ばれんたいんだよ』


朝から、そんな話をしてたがやとみつ。

なんでも人間たちが“ちょこれーと”を贈り合う日らしくて、俺たち動物には無縁だ。


『ばれんたいんは、すきなひとにこくはくできるんだぞ！』

『き、きたやま…っ！おれ…！』

『たま、はやくみやたにいってこいよー！』

『え〜、めんどくさいよ〜』


みつ、がやの告白も聞いてあげて。

みつに背中を押されながらも、職員室へ向かった。

夜勤だった宮田は机に突っ伏して寝息を立てている。


『…みあた、ねてるし。おこしちゃわるいよ』

『だいじょうぶだって！ほらっ』


…なんか、女子高生みたいな会話。

みつは俺の背中を押して宮田の前へ連れてくると、自分はそそくさと去っていった。


『…こくはく、ね…』


規則正しい寝息を立てる宮田。

顔の横まで来れば、特徴的な鼻が目の前にある。

ちょっとだけ前髪を引っ張ったけど起きなくて、疲れてるんだなって思う。


「んん…たま……ﾑﾆｬ…」

『…ん、ここにいるよ』


寝言だってわかってたけど、ちいさく返事をしてみた。

どんな夢を見てるのかな。

俺と一緒にいる夢なら、嬉しいな。


『…いつも、ありがと…』


自分でも聞こえないようなちいさな声で呟いて、痛くないように…そっと頬に嘴をつけた。

ほっぺにちゅーすると、気持ちが伝わるって聞いたことあるから。

宮田は起きなかったけど、なんとなくそれで満足した。



部屋に戻ると、がやとみつがﾎﾞｰﾙで遊んでた。


『いれて〜』

『おっ、おかえり〜』

『どうだった？』

『ん？まんぞくした』

『たまが？みやたが？』

『おれが』

『おまえがかい』


みつはｹﾗｹﾗ笑いながら、ﾎﾞｰﾙを飛ばしてくれた。



いつも言いたいこと素直に言えないけど、本当はすごく感謝してる。

だからたまには、ほんのり甘い言葉を言ってあげてもいいかなって。







「…宮田、おはよ。なに頭抱えてんの？」

「…横尾さん…っ、起きてたんだよぉ…」

「は？」

「〜〜〜…っ！やばい、嬉しい！」

「？よ、よかったね…？」






**


あにまるたちにはﾁｮｺﾚｰﾄ食べさせられないから、どうﾊﾞﾚﾝﾀｲﾝを表現するかで三日ぐらい悩みました(笑)

いつもﾂﾝﾂﾝしちゃう、たまちゃんの苦いとこ。

ごくまれに現れる甘さが、ﾋﾞﾀｰﾁｮｺﾚｰﾄにﾋﾟｯﾀﾘかなぁ〜と。


…安易？しってる！！！



20160214 谷森山

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