あにまる日誌二冊目！

こわいひと7*H ページ31

藤ヶ谷に次いで警察が現れて、男たちはあっという間に捕まった。

動物たちは突然増えた人間に怯えているようで、俺の後ろに隠れている。


「ふじ…っ」

「…北山、よかった…っ」


俺よりも泣きそうな顔をした藤ヶ谷。

ぎゅっと抱きしめられて、その温もりにまた涙が溢れた。


「被害者は、あなたですか？」


少し声をかけづらそうな警察の人。

車から出て来たﾎﾞﾛﾎﾞﾛの俺を見て、上着をかけてくれた。

俺の後ろには小さく震える動物たち。


「…いいえ。被害に合っていたのは、この子たちです」


子犬ふたりを抱き上げて伝えると、警察の人は“ん？”みたいな顔をした。

しばらく子犬の顔を見たその人は、納得したように小さく頷いて去っていく。


『きたやまっ、きたやまぁっ』

『うぇ…ふじがやぁっ…こあかったよぉ…っぐすっ』


隣でしっかりと抱き合うたいすけくんとみつ。

こわい思いをさせたな…なんて、ちょっと反省した。


「…北山、ごめん。俺…」

「なんで藤ヶ谷が謝るんだよ？べつに…」

「もう、お前のこと絶対傷付けないから…」

「……え？」


藤ヶ谷に向き直ると、たくさん涙を溜めた瞳に見つめられる。

少し冷たい、細長い指が頬を撫でて…心地良いと感じてしまう。



「…もう離さない。俺が守る。…だからもう一度……そばにいてほしい…」



同時に一筋だけ、俺たちの瞳から涙が流れた。


さっきの奴とは全然違う、骨ばった手が愛しくて。

この指の感触を、いつもどこかで思い出してしまって。



「……ばかだな、お前………俺も、ばか…っ」


言い終わらないうちに、強く抱きしめられた。

警察のｻｲﾚﾝがやけに遠くに聞こえる。

後ろに隠れていた子犬たちも、恐る恐る顔を覗かせた。


『…ひろみつくん？』

「あっ、ごめん。ほったらかしにしてたな」

『そのひとは？』

「はじめまして。宏光の恋人の、太輔です」

「こっ…！？」

『たいすけくん、おはなしできるの？』

「ふふ、できるよ。…可愛いなぁ、ﾄｲﾌﾟｰﾄﾞﾙとﾊﾟﾋﾟﾖﾝか」

『わたしたち、おなまえないの。おなまえちょうだい』

「えっ。…んー、そうだなぁ…」





**




『ｷｰｰｰｯ！もうゆるせない！』

「たま、落ち着いて」


朝起きたら誰もいなくて、夜中に騒動があったにも関わらず爆睡してた自分が、たまは許せないみたい。

宮田が一生懸命宥めてるけど、たまのｻﾝﾄﾞﾊﾞｯｸﾞに成り下がってる。

その様子を、どこか遠い存在に感じた。

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