あにまる日誌二冊目！

てのひら大の“すき”3*M ページ23

施設内の隅々を覗き込んで、ちいさなたまを探す。

どこの檻にも隙間にも居なくて、気付いたらすっかり日も高い。

みんなにお昼をあげる時間が迫ってて、仕事はきちんとこなす為に職員室へ向かった。




『みあた、みあた！』


近くの廊下できたみつがぴょこぴょこ跳ねてて、何事かと掬い上げる。

きたみつは俺の掌をくるくる回りながら、時折ぴょこぴょこ跳ね回った。


「きたみつ、どうしたの？」

『みあた、はやく！たまが！』

「ーっ…！？」


たまの名前を聞いた途端、俺は長い廊下を駆け出した。

職員室へ飛び込むと、中にいたﾆｶと横尾さんが驚いたように振り返る。


「びっくりしたぁ…廊下は走るなよ」

「横尾さん！たまは！？」


俺の声に、ふたりは顔を見合わせた。

ﾆｶはゆっくり俺を見ると、やがて職員室全体を見渡すように視線を落とす。

なんだか見ればわかるって言われた気がして、一歩足を踏み入れた。





「……え…っ」




窓、ｶｰﾃﾝ、ﾃﾞｽｸ、ﾊﾟｿｺﾝ、引き出し、作業台、水回り、床…

至る所に散らばってよちよち歩く、ひよこたち。


状況が読めず目をぱちくりさせていると、足元にがやさんがひょこひょこ近付いてきた。

きたみつは俺の手から飛び降りてがやさんの背中に乗ると、ふたりは俺を見上げて声をそろえる。


『『みやた、このなかから、たまをさがしだしてください！』』

「…え？」

『たま、みやたにおこられたから、あやまりたいんだって！』

『でも、おこられたのはたまのせいじゃないだろ？…だから、みやたがたまをさがしだせたら、あやまってもらおうって。きたやまとおれで、かんがえたんだ』


がやさんときたみつは真剣に俺を見つめる。

そんなふたりを撫でながら、横尾さんも口を開いた。


「ふたりなりに考えたんだよ。宮田が本当にたまのこと好きなら、ひよこの中から探し出すなんて朝飯前だ、って。たまが謝りたい気持ちも汲みたいから、宮田がたまを見つけられたらにしようって。…見つけられなかったら宮田、お前がたまにちゃんと謝るんだぞ」


…そんなことしなくたって、俺が謝りたいのに。


でも、せっかくがやさんときたみつの考えてくれた事だから。

大量に歩くひよこたちをひとりずつ見極める事にした。


「たまじゃないって思う子は、こっちに預けて」

「ん、わかった」


ﾆｶが示すｹﾞｰｼﾞを確認すると、ひとつ短く息を吐く。

気合いを入れ直して床に膝をつき、目の前を歩くひよこを掬い上げた。

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