あにまる日誌二冊目！

てのひら大の“すき”1*M ページ21

『みやたの、ばかぁ！！』


勢いよく職員室を飛び出したたま。

あまり大声を出さないたまの叫びに、巡回中だった宏光とﾆｶが大慌てで戻ってきた。


「なに、どうしたの！？」

「…ごめん、なんでもない…」

「なんでもないわけないだろ、ちゃんと話せよ」


一部始終を隣で見ていた横尾さんが、呆れたように言い放つ。

足元でおろおろしているがやさんときたみつを抱き上げた宏光は、ゆっくり俺を見上げた。


「…喧嘩した？」

「…うん、そんなとこ」


自分の失態を思い出すと、どうにも情けない。

思わず目元を片手で覆って天井を仰いだ。


『みやた、たま！おいかけないとっ』


きたみつの声も右から左。

返事をするのも億劫で…俺はそのまま目を閉じた。








今朝は出勤してきた時から、気分が最悪だった。

清掃に入った小屋で悉く動物たちにからかわれ、いたずらされて。

いつもなら軽くかわせても…今日はあまり余裕がなく。

職員室に戻ってきてからもｲﾗｲﾗしてたんだ。


『みあた、ふく…ごみついてる』


疲れた俺を見越して、よちよち近付いてきたたま。

清掃の際に汚れまくった服のｺﾞﾐを取ってくれて…それが心地よかった。


「ん、ありがとう」

『んふふ、いいえ〜』


しばらくそうしてたら、資料まとめてないのに気が付いた。

慌ててﾊﾟｿｺﾝを広げて、ｷｰﾎﾞｰﾄﾞを叩いていく。

たまはその間も服についたｺﾞﾐを取ってくれてた。


『ここ、さいご』


言いながらたまが取ってくれた箇所は、ちょうど目にかかった前髪。

集中してた視界に突然入ってきたたまに驚いて、誤ってｸﾘｯｸしてしまった場所。


「あっ…！」


ﾃﾞｰﾀの全消去。

真っ白になってしまった画面。

朝からのｲﾗｲﾗは、そこで爆発した。



「〜もう！なんでいきなり目の横来るの！？びっくりするじゃん！そんなとこ別に取ってくれなくていいんだって！」



俺の大声は職員室に響き渡った。

眠そうに目をこすっていたきたみつは飛び跳ねて驚き、横尾さんとじゃれていたがやさんは驚きのあまり、横尾さんの腕に隠れるようにしがみついた。

目の前で俺の怒号を受けたたまはﾎﾟｶﾝと目を丸くすると、やがてどんどん瞳に涙を溜めて。

そこでようやく、自分の言った事を理解した。


「あっ、いや…たま、ごめ…」

『…っ、みやたの、ばかぁ！！』


こうして飛び出して行ってしまったたま。

そう、喧嘩なんかじゃない。

完全に俺が悪いんだ。

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