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「ありがと」
いちごオレを渡すと、キヨくんは控えめに微笑んだ。
『えっと……何か悩んでるの……?あ、もしかして振られちゃったとか……?』
聞いてから、しまったと思った。
本当に彼が振られていたら、さらに傷を抉る事になってしまうから。
「いや、違ぇよ」
彼が笑いながら否定するから、ほっと胸を撫で下ろす。
「……俺さ、ゲーム実況やってるんだよね」
『ゲーム実況……?』
「そう。なんて言うかな、ゲームを喋りながらやって動画として投稿すんの」
『へぇ、なんか面白そう』
"ゲーム実況"なんて初めて聞く単語だったけど、高校生で動画を作ることはシンプルに凄いと思った。
「それでさ、結構コメントで傷つくこと言われるんだわ。「クソガキは黙れ」みたいな」
ひでぇよなってキヨくんは笑うけど、その顔は上手く笑えていなくて。
彼の表情に私まで胸が痛む。
「アンチに何言われても動じない自信があったけど……やっぱり、ちょっとしんどいなって。」
キヨくんの悩みの核心に触れて。
彼にかけてあげる言葉を必死に考えた。
ゲーム実況なんてキヨくんに言われて初めて知ったし、私は彼の気持ちを完全に理解してあげる事はできないかもしれない。
でも、彼は他でもない私に悩みを打ち明けてくれた。
だから、何とかしてキヨくんを励ましたかった。
それが例え、たまたま屋上で出会っただけだとしても。
『キヨくんはさ、ゲーム実況に一生懸命なんだね』
「えっ?」
『だって、一生懸命な事じゃないと悩んだりしないでしょ?キヨくんに酷い事言った人はさ、ただキヨくんが羨ましかっただけなんだよ。頑張ってるキヨくんが妬ましくなっただけ。』
『だから、もっと気楽に考えていいんだと思う。あと、キヨくんはきっと大物になれるよ!私が保証するから!』
私を驚いた顔で見つめていたキヨくんは、暫くしてふはっと笑いだした。
「そっか……そうだよな。俺、深刻に考えすぎてたわ」
何か取っ掛りが取れたような様子に安心する。
『元気出た?』
「めちゃくちゃ出たわ。ありがと」
目を細めて口を大きく広げて笑う彼は、輝いていて何処か眩しくて。
それはきっと、キヨくんを照らす夕日のせいだろう。
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ひばり(プロフ) - ゆーみさん» 愛を叫んでいただきありがとうございます!笑 嬉しいです〜! (2020年8月27日 21時) (レス) id: 22260f8f2e (このIDを非表示/違反報告)
ゆーみ(プロフ) - うぬぅ!こぉれすきだああああ(???) めっちゃ好きですこれ!! (2020年8月27日 20時) (レス) id: 764e348d9e (このIDを非表示/違反報告)
ひばり(プロフ) - ゆきさん» わぁ!ゆきさん!私、ゆきさんのお話大好きなので、そんな方からコメント頂けて嬉しいです……!!ありがとうございます……! (2020年8月23日 20時) (レス) id: 22260f8f2e (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - コメント失礼します!あ……面白そう……と思ったらひばりさんの作品でした、、、。前作のお隣さんも陰ながら見てました!これからも更新頑張ってください!! (2020年8月23日 20時) (レス) id: 0ee34f3752 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひばり | 作成日時:2020年8月22日 17時