【実況者】僕らはみんな狂っている－真相編－【ky,rt】 (ページ8)

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気づかないでページ8

だんだんと
レトくんに変化が現れている。

それは明らかだった。

しかも、

私にとっては悪い変化＿＿＿

.

レトくんが実況を撮っている間、

私は特にすることも無くて
録り溜めていたドラマを見る。

内容は不倫がテーマの
ドロドロしたやつ。

うわーよくこんな事できるなぁ

なんて

他人事のように
流れるドラマを見ていた。

俳優さんと女優さんが絡み合う……
言わば濡場のシーン。

ぼーっと眺めていると、

「何見てんの？」

という声が
後ろから聞こえた。

振り向くと、

そこにはレトくん。

『録画してたドラマだよ』

私はただ事実を述べた。

そう、私にとっては
ただドラマを見ていただけ。

なのに、

レトくんが
いい顔をしていない事がすぐにわかった。

理由が分からないままでいると

レトくんは私の隣まで来て、

私の顔を殴った。

「Aも、浮気したいとか思ってるの？」

「この俳優に、抱かれたいとか思ってるの？」

責める言葉と共に
暴行は幾度となく続く。

『違う、よ……そんなこと、思ってないから……！』

口では抵抗しているけど、

私のために嫉妬しているレトくんの姿が見れて
内心はすごく嬉しかった。

大人しく殴られていると、

突然、

レトくんの動きがピタリと止まった。

私の顔を見つめて

顔に出来たばかりの痣を
優しい手つきで撫でる。

私には何が起きたか分からなかった。

いつもだったら
殴ったあと自室に籠るはず。

でも、今日は違う。

自分で殴ったはずなのに
殴られた私をまるで憐れむかのように

悲しい顔をしたレトくんは
優しく私を抱きしめた。

『え……？レトくん……？』

「ごめん、A……酷いことして本当にごめん」

子供が親に怒られた後のように
私の肩で泣きじゃくるレトくん。

「俺、本当はこんなことしたくない……Aを傷付けるようなことばっかりして……」

その後も

レトくんの懺悔はしばらく続いた。

そこで

気づいてしまった。

レトくんは"正気"に戻りつつある事を。

今では
無表情で私を殴るレトくんが懐かしい。

違うよ、レトくん
私が見たいのはそんな弱気なレトくんじゃないんだよ

未だ私を抱きしめるレトくんに
そんなことを思っても届くはずがない。

私はレトくんに回していた手を

力なく下におろした。