真冬の海 ページ15
後悔した時にはいつも手遅れだった。
今も、草香のときも＿＿＿
自責の念に駆られる俺に、
Aは
『いっその事壊してしまいましょうか』
と微笑みながら言った。
守ることはできないと言った俺に、
納得でもなく離れていくでもなく「壊す」と。
やっぱりAは、
他とは違って不思議な子だと改めて思う。
こんなに一緒にいても理解できそうでできない。
掴めそうで掴めない。
「壊すって何すんの？」
俺は素直に疑問を口にする。
『うーん心中とか？』
無邪気に笑いながら言うAを見て、
簡単に死ぬ事が出来るような、そんな気がしてしまう。
『私は今すぐにでもできますよ』
海を見つめながら言うAの目は真剣で、
一つも冗談を言っていないことがわかる。
それが本当に最善なのだろうか。
考えてみてももう冷静な判断なんてできなかった。
何も言い返すことができない俺を見て、
『じゃあ今度にしましょうか』
と提案を持ちかけてくる。
「え？」
『キヨ先生が次、私に逢いに来た時。その時に心中しましょ』
Aの目はもう揺るがない、決意した目。
俺は逸らすことも否定することもできなくて、
「わかった」
とだけ呟いた。
それを聞いて、Aは少し安心したような顔をしていた。
『じゃあ私海で遊んできますね！』
突然海へと走り出し、
『わっ冷たっ』なんて言いながら子供のようにはしゃぐA。
そんな彼女を俺はぼーっと眺めていた。
今度会った時に心中。
それはつまり、今後一切Aに会わなければお互いに死ぬことはないということ。
Aの生死は俺に託されたってことか。
相当、重い判断を迫られている。
しかし、今考えても決断をすることは出来なくて、
未だ海で遊ぶAの元へと向かった。
「俺も遊ぶ」
そう言った俺に
Aは躊躇することなく水をかけてくる。
「うわっ冷てっ」
「お前真冬の海水舐めんなよ！」
怒る俺に、
『あはは、ごめんなさい』
と何の悪びれもなく謝ってくる。
さっきの暗い話などなかったかのように、
俺たちは夢中になって夜の海を楽しんだ。
せめて今だけは
現実から目を背けたっていいだろ。
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ひばり(プロフ) - ゆきさん» ゆきさん！コメントありがとうございます！散りばめた伏線を最終的に回収することができほっとしています……これからもよろしくお願いします！ (2020年5月28日 0時) (
レス) id: 22260f8f2e (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 昂った感情の抑え方が分からないのでコメントします……！！！タイトルの意味をぼんやりと考えながら読み進めていたら、最後であぁ……なるほど、と。綺麗な言葉に綺麗なお話でとても感動しました！！次回作も楽しみにしてます！！！！ (2020年5月28日 0時) (レス) id: 05bab72418 (このIDを非表示/違反報告)
ひばり(プロフ) - 涼風さん» コメントありがとうございます！私自身こんな終わりで大丈夫なのか……と不安があったのでそう言って貰えて嬉しいです！これからもよろしくお願いします！ (2020年5月27日 23時) (レス) id: 22260f8f2e (このIDを非表示/違反報告)
涼風(プロフ) - こっ、声が出なくなった……！なんだろうこの気持ちは。自分の語彙力じゃ表現しきれないけれど、最高の作品をありがとうございました！そして、投稿お疲れ様でした。これからも応援し続けます！ (2020年5月27日 23時) (レス) id: 3abcd35107 (このIDを非表示/違反報告)
ひばり(プロフ) - コメントありがとうございます！嬉しいお言葉……！これからも頑張って執筆していく予定なので、よろしくお願いします！ (2020年5月26日 18時) (レス) id: 22260f8f2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひばり | 作成日時：2020年5月10日 15時
