私を見ていたわけじゃなかった ページ11
もうすぐ中間テストが始まる。
だから今日の放課後は勉強を教えてもらうことになった。
『全然数学できないです……助けてください……』
「お前こんなのもできねぇのかよ……」
半ば呆れ気味に一つ一つ丁寧に教えてくれる。
教科書を指さすキヨ先生の手は、綺麗だけど、少しゴツゴツしていて、
そんなところにきゅんっときてしまう。
「お前ちゃんと説明聞け」
手ばかりを眺め、全く内容が頭に入っていない私の頭を小突いた。
苦戦しながらも教えられた通りに問題を解いていると、キヨ先生は大きな欠伸をした。
『寝てないんですか？』
「ん……最近寝不足」
目を擦りながら答えるキヨ先生。
眠い中勉強を教わるのもなんだか申し訳なかった私は
『ソファで寝ててください』
と言った。
少し悩んだ仕草をした後、「そうするわ」と言ってソファへと向かっていく。
「問題全部解き終わったら起こして」
『はーい』
私は再び問題へと取り組んだ。
『よし、完璧』
全ての空欄を埋めた私は、キヨ先生を起こそうとソファに駆け寄る。
規則正しい呼吸をしながら、気持ちよさそうに寝ているのを起こすのは気が引けた。
迷った挙句、いつもは触れられない頭を撫でてみる。
思っていたよりも柔らかくてさらさらの髪の毛。
撫でられるのが気持ちよかったのか、少し表情が緩んで可愛かった。
本当に幸せだな……
この時間がずっと続いてほしいと願っていた矢先、
「ごめ……ん……」
という声が聞こえる。
起こしてしまったのかと思ったが、相変わらずキヨ先生は目を瞑ったままだった。
寝言でも謝ってる……
私はそこまでキヨ先生に罪悪感を抱かせてしまっているのか、と心がもやもやした。
しかし、寝言の続きを聞いていると、
「ごめん……本当にごめんな、草香」
とキヨ先生は言った。
草香……？キヨ先生は誰の夢を見てるの？
途端にその疑念が心を渦巻く。
「ん……」
薄く目を開けたキヨ先生。
「あ、おはよ」
『おはようございます……』
「俺どれくらい寝てた？」
『30分くらいですかね』
俺が寝てて寂しかっただろーなんて無邪気に笑いながら私の頭を撫でるから、
「草香さん」について聞くことはできなかった。
だって、私はなんとなくわかってしまったから。
キヨ先生は私と草香さんを重ねているって。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 77人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひばり(プロフ) - ゆきさん» ゆきさん！コメントありがとうございます！散りばめた伏線を最終的に回収することができほっとしています……これからもよろしくお願いします！ (2020年5月28日 0時) (
レス) id: 22260f8f2e (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 昂った感情の抑え方が分からないのでコメントします……！！！タイトルの意味をぼんやりと考えながら読み進めていたら、最後であぁ……なるほど、と。綺麗な言葉に綺麗なお話でとても感動しました！！次回作も楽しみにしてます！！！！ (2020年5月28日 0時) (レス) id: 05bab72418 (このIDを非表示/違反報告)
ひばり(プロフ) - 涼風さん» コメントありがとうございます！私自身こんな終わりで大丈夫なのか……と不安があったのでそう言って貰えて嬉しいです！これからもよろしくお願いします！ (2020年5月27日 23時) (レス) id: 22260f8f2e (このIDを非表示/違反報告)
涼風(プロフ) - こっ、声が出なくなった……！なんだろうこの気持ちは。自分の語彙力じゃ表現しきれないけれど、最高の作品をありがとうございました！そして、投稿お疲れ様でした。これからも応援し続けます！ (2020年5月27日 23時) (レス) id: 3abcd35107 (このIDを非表示/違反報告)
ひばり(プロフ) - コメントありがとうございます！嬉しいお言葉……！これからも頑張って執筆していく予定なので、よろしくお願いします！ (2020年5月26日 18時) (レス) id: 22260f8f2e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひばり | 作成日時：2020年5月10日 15時
