最終話 狡い貴方はもういない ページ34
.
「〇※☆Δ♪◇ ダァァァアアアッ！！！！」
今では恒例となったキヨのタイトルコールから収録が始まる。
ヘッドホンからはガッチさんとレトルトの苦笑いとツボの浅いAの大爆笑が聞こえてきた。
キ「今日やっていくのはですね、無数にあるトラップを避けながらゴールを目指す、世界中で大流行りしたゲームになりますね」
視聴者に向けてゲーム説明をしているようだが、キヨの持ってくるゲームは、相変わらず俺たち五人しかプレイしていない。
ドが付くほどマイナーだが、それが案外面白かったりする。
暫くくだらない会話を繰り広げ、本編へと突入したのは動画開始から10分後。
これも俺たちお決まりのスタイルだ。
ステージをクリアしていく度に、トラップはどんどんと数を増していく。
最初は楽勝なんて笑っていたのに、そんな余裕すらなくなる程えげつない難易度に変わっていた。
キ「やべっ！！！罠はまった！！！」
「あぁぁあああ！！俺も！！！！」
トラップにはまる度に方々から起こる大絶叫。
もちろん俺も例外ではなく、キヨの大声に負けじと助けを求める。
レ「ごめん、俺助けられるアイテムないわ」
『私あるよ！アイテム！！！』
嬉々として言うAの声に、悪あがきでキーボードを連打していた手を止めた。
よし、これでトラップから抜け出せる。
「A！助け……」
『キヨ待ってて！今助ける！！』
言い終える前に重なったAの声。
トラップに足を挟まれたキヨに駆け寄るAの姿がモニターに映し出される。
『うっしーごめん！自分で何とかして！！』
なんとも無情な一言を残し先へと進む二人の背中を、俺は画面越しに見送った。
一人取り残された俺は、トラップと仲良く最後を迎える。
表示された「GAME OVER」の文字を茫然と見つめながら、心には落胆の感情が芽生えていた。
……いや、落胆する資格なんてねぇか。
「……もう、俺の入る隙はねぇなぁ」
思わず独り言を口にして、一人情けなくなる。
自分の立場を弁えなかったことも、正々堂々と向き合わなかったことも。
今になってその行いの愚かさに気が付く遅さも。
全部、情けない。
編集中のキヨ。
図々しいのは承知の上で聞いてくれ。
俺の独り言は、どうかカットしてほしい。
これは、惨めな負け犬からのお願いだ。
ー 狡い貴方を今日も想う Fin ー
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 178人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひばり(プロフ) - やとさん» コメントありがとうございます！そして、長らく更新できず、申し訳ありませんでした……前作から読んでいただき嬉しい限りです！！更新頑張りますので、完結まで見守っていただけたらと思います！ (2021年6月7日 1時) (
レス) id: 22260f8f2e (このIDを非表示/違反報告)
やと(プロフ) - 初めまして。好かれる理由が分からないでひばりさんを知り、こちらの作品も投稿され始めた時から読んでいて…今更新通知がきてドキドキしながらすぐに見に来てしまいました…！すごく好みの作品で…(T_T)！更新楽しみにしています。応援しております◎ (2021年6月7日 1時) (レス) id: 9b84b3a66a (このIDを非表示/違反報告)
ひばり(プロフ) - あさぎさん» コメントありがとうございます！更新できるように頑張ります〜！ (2020年12月31日 10時) (レス) id: 22260f8f2e (このIDを非表示/違反報告)
あさぎ(プロフ) - 続き楽しみにしてます。頑張ってください。 (2020年12月30日 19時) (レス) id: 86dd44b865 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひばり | 作成日時：2020年11月14日 17時
