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キヨに電話を掛けてから、三十分は経っただろうか。
しかし、未だ動く気にはなれず。
相変わらずベッドに伏したまま、重く苦しい時間を只管に耐える時間が続いていた。
ピンポーン
明かりもなく、しんと静まり返っていた部屋に、インターホンの音が鳴り響く。
モニターで顔を確認することもせず、躓きそうになりながら小走りで玄関へと向かった。
一刻も早く、一人きりから解放されたくて。
鍵を解錠し勢いよくドアを開けると、私を見下ろすキヨの顔があって。
その顔に酷く安心してしまった私は、張り詰めていた糸がぷつりと切れて、思わず涙が溢れてしまう。
大粒の涙が頬を一粒流れるごとに、苦しかった気持ちまで流れていくようで。
下手に我慢するよりも泣いた方が楽な事に気づいてからは、涙を止めようとも思わなかった。
そんな私の様子に、キヨは優しい言葉をかけるでもなく、ただじっとこちらを見つめる。
キヨは私の泣き顔なんて数えられない程見ていて、言わなくても泣いてる理由なんてわかっていて。
きっと、今更慰める気にもなれないんだろう。
「……さみぃから、中入れて」
『うっ、ん……』
少し後ろへ退くと、キヨは玄関に一歩二歩と歩を進める。
ドアはゆっくりと閉まり、ガチャリという音が聞こえた瞬間、
私はキヨに、勢い良く抱きついた。
『キ、ヨ……ごめっ……こんな、時間、に……でも、一人はっ、辛くて…………』
声をしゃくり上げながらも、なんとか言葉を紡いでいく。
しかし、キヨからは、返事は疎か相槌さえ聞こえてこなかった。
『うっしーを好きなの、もう、やめたいっ……苦しい……苦しいよ…………』
胸中を伝えたくて吐き出した言葉は、次第に嗚咽に変わっていく。
喉を詰まらせながら、ただ泣くことしか出来なくなった私に、キヨは言葉をかける代わりにそっと体を引き剥がした。
「ちょっと来て」
返事をする暇も、思考する暇も与えられないまま。
腕を掴まれて、容赦なく引っ張られる。
私は慌ててサンダルを脱いで、キヨに連れられるがままリビングへと向かった。
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ひばり(プロフ) - やとさん» コメントありがとうございます!そして、長らく更新できず、申し訳ありませんでした……前作から読んでいただき嬉しい限りです!!更新頑張りますので、完結まで見守っていただけたらと思います! (2021年6月7日 1時) (レス) id: 22260f8f2e (このIDを非表示/違反報告)
やと(プロフ) - 初めまして。好かれる理由が分からないでひばりさんを知り、こちらの作品も投稿され始めた時から読んでいて…今更新通知がきてドキドキしながらすぐに見に来てしまいました…!すごく好みの作品で…(T_T)!更新楽しみにしています。応援しております◎ (2021年6月7日 1時) (レス) id: 9b84b3a66a (このIDを非表示/違反報告)
ひばり(プロフ) - あさぎさん» コメントありがとうございます!更新できるように頑張ります〜! (2020年12月31日 10時) (レス) id: 22260f8f2e (このIDを非表示/違反報告)
あさぎ(プロフ) - 続き楽しみにしてます。頑張ってください。 (2020年12月30日 19時) (レス) id: 86dd44b865 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひばり | 作成日時:2020年11月14日 17時