モブヤンキーの逆襲 tk × in

初めての痛み ページ35

伊野尾side




ムカついた、頭にきた




薮先生に手のひらで遊ばされていたこと


それ以上に、たかきを悪く言われたことに




言葉より先に体が動いて、右手には初めて感じる痛み




「退学なんて上等だよ。お前なんか大っ嫌いだ。」





行くよ、とたかきの腕を引っ張って部屋を出る


あいつの心配なんかしてやんない





「たかき、···家行ってい？」


「···おう」





＊＊＊






一言も喋らないまま、着いたたかきの部屋



カバンをドサッと下ろすと、うしろから強く抱きつく


たかきの手が、俺の右手を優しく撫でた




「慧····」


「ねぇ、おねがい、····っ、抱いて」


「···ばか、出来るかよ」





手を解かれると、たかきがこっちを向いて正面から抱きしめてくれた



たかきの匂いに包まれて、ここまで我慢してたものが全部溢れて、溢れて止まらない





「おれっ、だめなのに、殴っちゃった、っ、」


「うん」


「手、いたくて、でも、っくやしくて、」


「うん」


「すごいっ、·····好きだったのに、」


「····ん」






頭を撫でてくれるたかきの手が心地よくて、強く抱き締めてくれるのが嬉しくて、もう思いっきり泣いた




今までの淡い感情を全部忘れるくらい、涙を流してストレスと一緒に発散




いつもより優しいたかきに、めいっぱい甘えた






「うぅっ、ズズっ、·····はぁ、」


「落ち着いたか？」


「ん、····あ、鼻水付いた」


「ったく、今日だけ許す」





たかきの肩は、俺の涙とその他もろもろで色が変わるほど湿っぽくなってた




それなのに一言も怒らない、弱ってる時にこういう優しさはずるいと思う





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