プロローグ ページ1
10年前のあの日
昨日のことの様に覚えている
満月のとても綺麗な夜だった
怪しい2人組を見かけた
興味本位で後を付けた
この日のことを後悔しなかった日はない
そこで見たものは
銃を突きつける男
それを傍観する男
そして命乞いをする男だった
今でもたまに夢を見る
死にたくない
殺さないでくれ
未だ耳に残っている
男は殺された
僕はいてもたってもいられず
気付いたら奴らの前に出ていた
「何を、されているのですか?」
「ア゙?誰だ」
恐怖しかなかった
それでも見て見ぬ振りは出来なかった
「僕はただの通りすがりです
警察、呼ばせていただきました」
咄嗟についた嘘
これで男達は逃げると思った
しかし男の一人が僕を拘束し、
もう一人が怪しげな薬を取り出した
あぁ、毒殺されるのか、と思った
不思議と焦りは感じなかった
「まだ実験もしてねぇ新作の毒だが丁度いい…
お前が被験者第一号だ」
男は不敵な笑みを浮かべて
僕に無理矢理薬を飲ませた
「警察を呼んだってのが本当だったら面倒だ…
ずらかるぞ」
そう言ってこの場を離れて行った
この時飲まされた薬の作用は恐ろしいものだった
体全身を突き抜ける痛み
まるで体が溶けているかのように熱い
そんな状態でも
どうしてもメッセージを残したかった
あの人に
ーーーーーーーーーー
…ごめんね…
…僕…もう死ぬんだ…
…毒を…飲まされたみたい…
…いつも…ありがとう…楽しかった…
…ペアリング…嬉しかった…
…こんな女らしくない…男っぽい僕に…
…好きだと言ってくれて…
…本当に幸せだった…
…最後にもう一度…
…君と顔を合わせて話したかったなぁ…
…こんな勝手な…僕でごめんね…
…本当に、ありがとう…幸せでした…
…君も幸せ…だったらいいな…
…君と幸せになりたかったけど…
…どうか君だけでも、幸せに…
…さようなら……愛しています……零くん…
ーーーーーーーーーー
最後の力を振り絞って撮った音声メッセージ
相手に届いたかどうかは
定かではない
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作者名:キヨ@kiyo | 作成日時:2016年5月19日 17時