第78話 ページ29
「あんまり・・・」
「個性で倒れたの、ついこの間って聞いたよ。やっぱりまだ厳しいか」
「はい・・・」
「講堂の公演、いける？」
「・・・それで無理だって言ったらどうなるんですか」
「そうだね・・・。」
ふむ。顎に手を当てて考えるその姿はかの有名な像みたいだ。
「人間だし、仕方ないんじゃないかな。倒れちゃうなんて以てのほかだしね」
その言葉に、甘えたくなってしまった。
冗談で言ったのに、まさか肯定の意が返ってくるなんて思ってなかったから。彼は、ヒーローなのに。
「ってヒーロー服脱いで、ヒーローじゃなくなった俺ならそう言うかな」
「アクア、ショット、さん？」
「君が冗談で言ってることを承知で言うよ。君は今、職場体験として俺のところにいる。君はヒーローというものの現場を学びに来たんだよ。確かに君の職場体験は少し特殊で現場を学びに来たというよりも、個性による治療がメインなのかもしれない。」
ああ、そうだ。この人はヒーローなんだ。
「でもさ、ヒーロー目指してる人が、簡単に困った人投げ出しちゃダメだ」
自分の言葉が軽率だったと思いつつ、私は自ら望んでヒーローの道へ進んだ訳ではない。
どうしてこんなに怒られないといけないの？
私は、ヒーローになりたいわけじゃ、ないのに。
そう、思ってしまった私はヒーローの本質とやらからはどうやらほど遠いのだろう。
「すみません・・・」
「いいよ。疲れてるんだ。弱音くらい吐きたくなる」
残りの休憩時間、しっかり休むんだよ。と頭をポンと人撫でして彼は部屋を後にした。
「・・・」
あーあ。せっかく休憩もらえたのに、嫌な気分。
私は、注意されたことが素直に受け取ることができない人間だ。
なんて、最低なんだろうか。
・
休憩時間が終了し、私を呼びに来た医院長と共に講堂へと向かった。
裏手から講堂に入り、舞台に立つと、そこには満席に近い数の人がいた。
こんなにたくさんの人が私の歌を待っていてくれたんだ・・・。
先程よりも身近に人を感じて緊張で足が震える。
挨拶もそこそこに、さっそく歌うことになり、曲がかかる。
中庭で歌った曲と同じ曲を同じ曲順で同じように歌ってる。さっきも何も変わらないはずなのに、少し声が震える。
そんな中、Aは最後までうたいきった。
歌い終え、拍手を背に舞台裏へと消えていく。
舞台裏に入った途端、糸切れた人形のようにぱたりと倒れた。
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桃凛(プロフ) - 鶴さん» とても励みになるコメントありがとうございます！飽き性なため亀更新ですが、更新をお待ちいただいてる皆様のためにがんばります！ (2019年5月14日 17時) (
レス) id: eb6c79b94d (このIDを非表示/違反報告)
鶴(プロフ) - とても面白いです。応援しています！更新頑張ってください！ (2019年5月1日 13時) (レス) id: 2141c8a0fe (このIDを非表示/違反報告)
桃凛(プロフ) - potapotawさん» ありがとうございます！実は単行本を持っておらず、アニメも見る暇もなく、ヒロアカは少年ジャンプのアプリでコインを貯めて読んでるので亀更新になってしまってます・・・。こんな亀更新でもそんな風に応援してもらえるとすごく励みになります！頑張りますね！ (2018年7月3日 21時) (レス) id: eb6c79b94d (このIDを非表示/違反報告)
potapotaw(プロフ) - 一言言わせてもらうと、最高です!!!更新の方、無理をせず頑張ってください(*´∀｀)影ながら応援しています。 (2018年7月3日 15時) (レス) id: 7ac955efaf (このIDを非表示/違反報告)
桃凛(プロフ) - すみません。通達ありがとうございます (2018年6月5日 12時) (レス) id: eb6c79b94d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桃凛 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/risa/hp/kennkonn/
作成日時：2018年6月5日 10時
