やんちゃだがバレーは上手い奴が帰ってきた【ハイキュー!!】【男主】⑤ (ページ38)

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やりたいことページ38

やっぱり、それだけが分からなかった。俺の真ん中にはずっと、バレーがあったから。

『おかしいと思うだろうけど、俺……ずっとバレー以外に興味とか無くて』

プロの世界に飛び込むつもりは無い。それが現実的じゃない事くらい分かってる。俺は、ひと握りの人間ではないから。

でも社会に出て俺は何が出来るだろう。俺を受け入れてくれる人は何人居るだろう。自分を押し殺して外面良くするのも、多分どっかで限界が来る。そうはなりたくない。

「……立花くん」

この先生なら、俺は話してもいいと思った。分かってくれるだろうという信頼があった。そんな勝手な期待迷惑かもしんねぇけど、高校が終わった後の自分が、俺にはさっぱり分からなかったから、頼るしかなかった。

「社会に出て1人で生きていく事は、はっきり言って不可能です。働くとなれば尚更意識しなければいけません。現実的な事を言うと、上司や同僚に不適切な態度を取れば職を失う事すらあります。

それを踏まえた上で、君に出来る事は何ですか？具体的じゃなくてもいい、小さな事でも構わない、立花くんがやってみたいと思う事は、君だけが知っています」

その言葉に、ふとあいつらの顔が浮かんだ。チームメイトだけじゃない、コーチやOB、監督や、他校の奴らも。俺が繋がりに目覚めてから、意識し始めた人達だ。

繋がり……切らしたくねぇな。

『先生、今の社会って悪い事多いっすか』

「そう……ですね。犯罪やそういう"悪い事"は、簡単には無くならないでしょう」

やっぱり、世の中って理不尽だ。ばあちゃんが責め立てられたのも、理不尽だ。俺に親が居なかったのも、理不尽だ。

理不尽で苦しむ奴はきっと居る。そういう理不尽で、俺はあいつらとの縁を切りたくはない。ずっとダチで居たい。あの頃は楽しかったと、何歳になっても笑ってられる仲間でありたい。

色んな理不尽から、あいつらを守ってやりたい。

『───っ！！』

「……答えは見つかりましたか？」

『あ……俺、っ……く、っはは…』

「立花くん……？」

『先生……俺、やっぱ烏野に来て大正解だったわ』

「！そうですか……それは、良かったです」

『ちょっと探してみる。決まったら、一番にあんたに言うから待っててくれ』

席を立って扉に手をかけた。早く、早く調べてぇ。早く知りてぇ。……あ、でもこれだけは言っとかねぇと。

『武田先生、ありがとうございます』