やんちゃだがバレーは上手い奴が帰ってきた【ハイキュー!!】【男主】⑤ (ページ36)

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敗北者ページ36

「叶多食えそうか？」

『ちょっとなら食える』

「そうか」

『翔陽はまだ寝てんのか』

「今烏養さんが雑炊持って行った。てか、お前だって軽い怪我じゃねぇんだから自分の心配しろ。まさか頭から血流すなんて思ってなかったし……」

『久々にちょっと痛かった』

「慣れるなバカ」

『バカじゃねぇ』

烏野は準々決勝で鴎台に敗北し、結果はベスト８。客観的に言えば、弱小だったにしては上々過ぎる結果だと思う。大健闘だ。優勝候補を下し、因縁にも決着をつけ、全国の強豪相手に全員が120％の力を出した。

多分、これが俺らを主人公にしたコミックだったら、全国優勝して意味分かんねぇくらい綺麗に完結したんだと思う。作者の感謝の言葉とか、新作の告知とか、そういうので締めくくられたはずだ。最終ページは俺らの集合写真かな。

でも現実は違う。そもそも、最初から優勝が決まっていたら何も面白くねぇ。勝てるから戦う訳でも、負けるから戦わねぇ訳でもない。ただ目の前の相手を越えていく、俺らはいつでもそうだった。今回、大舞台でそれが叶わなかっただけ。

「ちゃんと肉食えよー」

『そんな食えねぇって言ってんだろ』

悔しい。つか勝ち負け関係なく、勝負が決まるその瞬間に選手として立ち会えなかった事が何より悔しい。全部分け合うって決めたのに、最後の最後で出来なかった。

でも嘆いたって結果が変わる事もないし、怪我する前に戻れる訳でもない。誰かが悪かったって話でもねぇ。あの場で全力出した結果がこれだっただけで、俺はそれを受け入れてる。終わっちまったもんはもう終わっちまったんだし、今更文句垂れるよりは、俺だったら、綺麗なまま取って置きたいって思う。

「今日も冷えそうだなぁ……」

『んだな』

「立花、水零れそう」

『お、サンキュ』

俺らは俺らとして戦った、それだけが事実として残ってればそれでいい。