やんちゃだがバレーは上手い奴が帰ってきた【ハイキュー!!】【男主】⑤ (ページ35)

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目撃者ページ35

「烏野の陣地じゃなくて良かったのか？」

『応援でうるせぇからな』

現在俺の隣に居るのは、頭に包帯を巻いた立花叶多という男である。

魔の三日目とはよく言ったもので、いやそういう事じゃないのかもしんないけど、先程の烏野との試合をしていた時、第3セット中盤で立花は怪我をして途中退場した。結果的に烏野は俺らに勝った訳だけど、こいつとしては最後までコートに立っていたかったんじゃないかと思う。

医務室で治療を受けて、念の為に病院にも行ったくせに、無理言って戻って来た立花だったが、当然試合に出られる訳もなく、準々決勝はここで観戦する事にしたらしい。

なんで音駒の陣地に居るかは俺にもよく分からない。こういう時は1人になりたいタイプだと思ってたから、隣に座った時は心臓が止まりかけた。

「やっぱ、やりたかった？」

『どっちをだ』

「俺らとの試合と今の鴎台との試合どっちも」

戻って来た時には既に試合も始まっていて、でも何故か、こいつの横顔に焦りとかは見られなかった。チビちゃんが倒れて退場しても、変わらずコートを見続けて、顔を歪める事もしなかった。

『やりたかったよ』

淡々とそいつは言った。

『正直悔しい。怪我で退場なんてダセェ事したくなかった。勝つ瞬間に俺も居たかったし、今もあいつらと同じ熱感じながら戦いたかった。鴎台は面白ぇ相手だと思ってたから尚更な』

「……の割には冷静に見えるけど」

『なんでだろうな。頭打ってボーッとしてんのもあると思うけど』

チビちゃんが居なくなってから押され気味の烏野。立花はそれを、真っ直ぐに見ていた。決して目を逸らさず、溜め息も舌打ちも漏らさずに。

『なんか、お前らとの試合楽しかったんだよな』

「！」

『すげぇ楽しかった。これ以上無いと思った。……俺は、何かの主人公みたく正統派のバレーやって来た訳じゃねぇから、半端な終わり方すんだろうと思ってたから。でもあんだけ楽しくて、熱中してたら、俺にしちゃあ良い終わり方だったと思うんだよ』

「自分が……チームの最後の試合に出られなくても、か？」

試合終了の笛の音が無慈悲にも響いた。それでも立花は目を逸らさない。

『今更何をどう言っても、俺の高校バレーは今この瞬間終わっちまったし、悔しい事に変わりはねぇよ。でも、駄々こねんのも違うだろ。

楽しい時間は、絶対どっかで終わんだからよ』

俺はこの時、立花の高校3年間のバレーが終わる瞬間に立ち会っていた。