やんちゃだがバレーは上手い奴が帰ってきた【ハイキュー!!】【男主】⑤ (ページ30)

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優勝候補ページ30

二日目の稲荷崎戦は、優勝候補相手にしては上々の試合運びだと思った。田中や西谷がギアを上げ、山口や菅原も自分の仕事をキッチリこなした。まさか向こうの双子が変人速攻をコピーしてくるとは思わなかったが、それも月島が止める。

「やっぱ、昨日あの４番をあんま出さんかったのは戦略か……」

「3年で最高身長やのに変やと思ったわ」

案の定、立花を出さない作戦は上手く機能してくれている。向こうにとって立花の情報は、せいぜい県予選決勝、白鳥沢戦くらいだ。そこから更に力をつけた立花に、稲荷崎は乱されてくれる。

しかし……

「立花、どうした」

『……何でもねぇ』

稲荷崎のTO中、何故か立花は浮かない顔をしていた。

アップは充分だったはずだ。前半も、2セット目中盤まではよく活躍していた。それが第3セット、今、立花の調子が崩れ始めた……？

スタミナ切れには見えない。ただどこか、追い詰められているような、苦しそうな表情をする。

「…烏養くん」

「先生も気付いたか。……立花！次サーブのローテで月島と交代だ、少し頭整理しろ」

『っ……っス』

以前のように激昂する事もなく、まだ自分の中の蟠りにあくせくした様子でコートに戻って行った。そしてサーブが回ってきたところで再び戻って来た。月島と入れ替わりでコートから出て行くその横顔を見るに、俺の予想は大きく外れてはいないのだと分かった。

「先生はどう思う？」

「僕は今まで、3年生の精神力に何度も驚かされてきました。どんなに苦しい場面でも互いに背中を叩き合って鼓舞する姿を……見慣れてしまったんです」

「俺も自覚が無いってわけじゃねぇんだが、確かにあいつらはそれだけすげぇよ」

「……立花くんは、プレッシャーなんて感じないと思っていました。自分に対する苛立ちはあるかもしれませんが」

先生の言う通り、恐らく今立花を駆り立てているのは、終わってしまう事への恐怖心だろう。一番縁遠いと思ってたが……丁度昨日の夜、あいつらがベランダで話しているのを下で聞いていたからこそ分かる。

〈俺、お前らと勝ちてぇな！〉

確実に立花の中で根付く、仲間意識がそう思わせるのかもしれない。ここで負ければ、もう同じ仲間とバレーは出来ないから。だから終盤、ブロックも無理に止めに行こうとした場面が何回かあった。

「立花、ちょっと来い」

そんなあいつに、俺が言える事は――――