やんちゃだがバレーは上手い奴が帰ってきた【ハイキュー!!】【男主】⑤ (ページ29)

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With You ページ29

初戦、椿原学園に勝利したその日の夜。

「うっ、寒……」

『そんなでもねぇだろ』

「叶多は寒さには強いもんなぁ……」

扉を開けてベランダに出た東峰と叶多は、少し前に既に出ていた澤村に並んで柵にもたれる。しばらくの間無言が続き、ふと澤村が口を開いた。

「旭、アレやってもいいぞ」

「なに？」

「"いよいよ最後の大会だな……"的なやつ。インターハイの時止めたからな」

「そういうノリでやるもんじゃねぇべ」

『言っとけよ』

「一番"最後"だと思ってない奴に言われてもなぁ」

呆れたように笑う東峰に同調する澤村。それにムッとしながらも、前を向いて叶多は言った。

『最後の"試合"だとは思わねぇけど、最後の"大会"ではあるだろ。留年でもしねぇ限りは３月には卒業すんだからよ』

「……はぁ」

『あ？』

「いや……叶多って変なとこで正論突き付けてくるよなーって」

「でも叶多がそうなるのも分かる。スガがちょけてる時とかも大抵静かだよな」

「何が言いたいんだよ…」

「アレだな。大地に余裕が無ぇと逆にこっちは余裕が出来るフシギ」

「うるせー」

言語化された事に対して納得していた叶多は、夜空に向かって白い息を吐きだした。頭の中にあるのは、"最後"の二文字。改めて色濃い３年間だったと振り返りそうになるが、まだ本当の最後ではないと頭を振った。

「てか叶多、明日の稲荷崎大丈夫か？今日もアップだって十分じゃなかっただろ。他の奴らに体動かせって」

『俺があれを最善だと思ったからいーんだよ』

「頼むぞ？」

『誰に言ってんだ』

「まったくお前は……ドライっていうか何ていうか。インハイの時の旭なんかあんなにセンチメンタルなってたのに」

『完全に終わるまで俺は"最後"だとは言わねぇし、決まってもない勝敗をどうこう言うつもりもねぇ。勝ちてぇから勝ちに行く、俺がコートに立つ理由はそれくらいだ』

「何だよ……予選終わった時は"お前らとじゃなきゃ勝てなかった"とかアツい事言ってたくせに」

『……ああ』

叶多は、柵に預けていた体を起こし、ジャージのポケットに手を入れて空を見上げた。

『あれも本心だぜ。だからさ、』

ふはっ、吐き出した色は白い。

『――――俺、お前らと勝ちてぇな！』