自由は (ページ7) - 小説/夢小説

今日:9 hit、昨日:2 hit、合計:150,411 hit

103 香山side ページ7

Aの目が覚めてと聞いて心底ほっとした。1週間も眠っていたんだから、そりゃ心配したわよ。

外傷はほぼ無し、キャパオーバーによる意識消失らしいわ。

香山「A、学校には来れそう？」

病室のAの雰囲気は、以前とほんの少しだけ違っていた。こう、怒りだけだったのが、悲しみも増えたみたいな。

A「香山さん……私、意識が無かった間、夢を見ていました。」

香山「夢？」

A「零という女の子に会いました。彼女が言うにはあの世界はなんでもありなんです。私が望む世界でした。」

！Aが望む世界……それはつまり、個性がない平凡な世界。そんなことが……

香山「楽しかったのね」

そう言うとAは、下を向いて唇を噛んだ。拳を握りながら

A「楽しかった、です。こんな世界よりずっと暖かくて、父さんも母さんも普通の夫婦で……っ個性なんかなくて、普通の夏で、ニュースも普通で。私が苦しむことなんか一つもなかった……！」

珍しく饒舌なAね。なんて他人事のように捉えながら話を聞く。

A「あそこに残ることも出来ました。ずっとあの世界で生きていたいと思いました。」

香山「っ……それで、戻ってきたことを後悔してるの？」

Aは控えめに首を横に振る。

A「確かに、目が覚めた時なんで戻ってきたんだろうって思いました……

でもっ……零ちゃんには分かられてた。戻りたがってること……っ」

Aが、この世界に戻りたがってた……？

A「……私には分かりません。母に見捨てられ、父にも追い出された。私は何を恨めばいいですか？

ヒーロー？個性？あなた？それとも私？全部憎いですよ。私の意見を聞いてくれない大人も、何も知らないで優しくする彼らも、何も出来ない私も、全部……」

初めて聞いたAの気持ち……恨む、か。何かを憎まなければ生きていけないのね。Aは嫌がるだろうけど、やっぱり可哀想って思ってしまう。ごめんね、私も出来ることは少ない。

こんなに傷付いて、悲しんで、恨んで、迷っているこの子を、私は何一つ救えやしない。

香山「学校、行こっか」

A「っはい……」

どうか、この子が心から笑える日が訪れますように。と願うことしか出来なくてごめんね。