嘘の石【Dr.STONE】② (ページ10)

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Z=58:駆け引きページ10

「ふぅ……」

どうしようもないって状態は、案外悲しみに暮れる訳でもないらしい。ただ心ここに在らずという感じで、理由なく心が空っぽだ。

水面に映る私の顔は笑っていない、怒ってもいない、哀愁も無い、感情の無い顔だった。何となく悔しくて口角を上げてみたら、クソブスな顔になってしまった。あれまぁ上手くいかんのね。

"─────"

「……いやいや。ないっしょそんなん。ありえな〜」

そんな事、今まで一度だって気にした事なかったじゃん。今更そんなの考えて何になんの？私らしくないし、不必要だ。

じゃあ、この虚無感に名前を与えるとしたら？

「……」

らしくないなぁ……認めたくない、なんて。普通の人みたく悩んで、考えて、苦しんで、泣いて。そういうのは、私じゃない。私は誰よりも楽しんで、滾って、笑うんだ。私は苦しまない、悩まない、泣かない。

罪悪感なんて、抱かない。

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千空side

ケータイを作るっつー事で人手が要るのに、俺の助手はどこ行きやがった？ゲンにはそろそろめんどいと断られ、仕方なく自分で探しに来た。まぁ凡その場所はゲンに聞いて分かってるし、この辺の地形を知るにも効率的だ。

って考えてたらもう見つけた。案外近い場所に居た。

千空「おいA。黄昏てる暇あったら手伝え」

「……あー…うん。分かった」

千空「？何かあったのかよ」

やけに気の抜けた……いや、生気が抜けた声。珍しいというか、聞いた事がない声だった。湖畔に座るソイツの背中に近づくと、Aは勢い良く立ち上がって背中を伸ばした。

「〜っ……はぁ……」

一気に脱力した体を捻って、顔を俺の方に向けた。眉が少し下がって、口元が引き攣ったようにヒクついていた。

「……笑えてないみたいね」

千空「！……モーシワケナイじゃなく、申し訳ない……か？」

「違うよ。……」

何かを言いかけた口は、その言葉を表に出すまいと無理やり閉じられた。分かりやすいんだか分かりにくいんだか……何なんだよテメーは。

イラつくのに、俺はいつもコイツに振り回されてやる。コイツから目が離せなくて、目を離したくなくて。コイツの本当を知りてぇと思う。

千空「肩貸してやろうか？Aさんよぉ」

「生憎だけど、君に勝ち目はないよ。勝つのは私、最後まで笑ってられるのは私の方」

千空「そりゃどうだろうな」

Aは、目を細めて妖しく笑った。