Z=97:本音 ページ49
何が何だか分からない。ただ氷月の言葉がきっかけなのは分かる。
今私の思考を支配しているのは、恐怖……？怖い、何が？……いや、考えなくても分かる。千空に見放されるのが怖いんだ。千空は、村の襲撃方法は私が提案したものだって事を知らない。それを、このクソ野郎が暴露してしまった。
自分の嘘がバレるのが、こんなに怖いなんて思いもしなかったなぁ……だって今までは、バレて嫌われようが、玩具が減るくらいにしか思ってなかった。減るならまた作れば良いって、所詮消耗品だって。離れていくなら、それを引き留めようとは思わなかった。
嫌だ、千空が離れていくのだけは、きっと耐えられない。君が居ない人生はちっとも面白くない。
石化してる間、私が何を考えてたかなんて、知らないでしょ。1とか2とか、数えてた訳じゃない。16年っていう、人類史に比べたらちっぽけな人生の時間を、最初から見てたのさ。
私はいつからおかしさに笑うようになったのか、いつから騙し始めたのか。嘘を愛すようになったのはいつからだっただろうかって。くっだらない事を延々と、いつ途切れるかも分からない意識の中で。……不思議と、途切れる事はなかったんだけど。今なら分かる気がする。
千空ならこの暗闇を打ち破ってくれるかな。そう考えてた。
16年を思い返すなんて、3700年の時間の中じゃ足りなくて、いつの間にか思考は彼の事にシフトしていた。今何をしてるだろう、これから何をするんだろう、また科学に誘ってくれるかな。
君の事を考えていると、何故か自分が普通になった気がする。悪くも良くもない、フッツーの人間。だから絆されたんだろう。それもずっと昔から。気色悪いと思いながら、悪くないとも思う。
「っ、…千、空……」
私はこれでも君を大事に思ってんだよ？似合わねーって笑うだろうけど、私は本気だ。それこそ笑い話になるかな。
君に死なれたら困るのは、何も損得だけで言ってんじゃない。ゲンみたいで苛つくけどさ。
君に負けてほしくない。死んでほしくない。泣いてほしくない。勝ってほしい。生きてほしい。笑っててほしい。
千空の得は私の得。千空の損は私の損。
ねぇ、嘘じゃないよ。
「信じて……っ」
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作者名：すみた先生 | 作成日時：2022年3月29日 23時
