Z=36:普通じゃない愛 ページ38
千空には、ゲンがラボに戻るまでに机に置いとけって言われた。だからそのタイミングでコーラを置いといた。それだけ。
まぁ、断ろうと思えば断れたけど、断りきれない理由があった。
「つくづく似てるよなぁ……あさぎりゲン。きっもちわりぃ〜」
嘘が上手いのはもちろん、喋り方や仕草まで。まるで生き写しのようだ。気色悪いったらありゃしない。なぁ〜んでこんな所で彼女の面影を見なきゃいかんのか。もう3700年も経ったっつーのに、まだ彼女を思い出さなきゃいけない。懲り懲りだってのにね〜。
〈凡人には分からないわよね〜こういうのは。だから教えるの。凡人なんて楽しくないじゃんね〜〉
「……ハハ」
彼女の声を思い出すと、何だかどうして、笑えてくるものだ。何が面白いのかはよく分からない。ただ、何となく滑稽な声に思えるんだ。
凡人なんて楽しくない、そう言ってた彼女が、最後には警察の車に乗っていく様は、傍から見ていると本当に笑えた。実の娘である私ですら、その様子を腹を抱えて笑っていた。周りが私に奇異の目を向けていたけど、あんま気にならなかったかな。
「うん……めっちゃ面白かったなぁ」
自分の欲に忠実な彼女が、割と好きだったのを思い出した。
今日はこれだけ稼いで来たの!と恍惚とした表情は見ていて飽きなかったし、詐欺術を私に叩き込んでる時の楽しそうな顔と言ったら本当に滑稽だった。母親らしからぬ彼女が私を次の詐欺師に作り上げたのには、もうスタンディングオベーションだよ。最高。
だから、捕まった時は少し残念だったな〜。滾らないのは好きじゃない。面白味が無くなるのには寂しささえ覚えた。
つまるところ、私は彼女の事を玩具のようにしか思っていなかったのかもしれない。
彼女は私を楽しませてくれる玩具。でも居なくなったから好きじゃない。だからゲンも好きじゃない。私と同じような人間だから、私とは合わない。彼女とは違う私とは、合わない。馴れ馴れしくされるのは不快なのさ。それを許してるのはごく限られた人間だけなんですわ。許されるのは、玩具だけ。ゲンは玩具になれない。
「ホンット……嫌いだわ〜」
この愛情、変だと思う?
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作者名:すみた先生 | 作成日時:2022年2月26日 21時