55話:面倒 ページ9
直哉が電車に乗って目的地に着いた時、既に店の灯りは消えていた。ここだけ閉店してしまったらしく、辺りはまだ賑わいを見せている。
傘に当たる雨音か酷く煩わしい。
「あら……すみませんがもう閉じてしまいましてねぇ。また明日来て頂ければ売れるんですけど」
直哉が俯いた時、奥から老婆が出てきた。
「申し訳ありません……閉じる寸前に来たお客様で本当に最後だったんです」
駄目か、と踵を返そうとしていた直哉は、老婆の言葉に思わず足を止めた。……いや、それがAである自信などこれっぽっちも無いのだが、少し気になってしまったのだ。
直哉「それ、どんな奴や」
「えぇ以前も来て頂いた方なんですが……上背は私より少し高いくらいで、それでいてやけに大人びているような青年でしたよ。今日は……こんな雨なのに傘も差さないでびしょ濡れでねぇ……風邪ひかんとええのですけど」
直哉「……」
では、と奥に下がった老婆の背中を眺めながら直哉は拳を握る。
─────見つけた。
雨が降り始めたのは夕方。そこから今のような土砂降りになったのは丁度直哉が家を出た頃。店を閉めるとしたらそのタイミング。そしてそのタイミングに滑り込むようにAは現れた。Aの移動手段が己の脚だとしたら……
直哉「……まだ居るな」
憶測ではあるが、恐らく当初のAに目的地は無かったはず。故に焦りも無い、走って移動はしないだろう。低身長のAの移動速度など直哉にも見当がつく。
もしかしたら……とある予測が過る。そしてそれを考えるうちに、予測は確信に変わろうとしていた。
直哉は早足で駅に向かい、電車に乗り込む。思う以上に遅い電車に苛つきを抑えながら、早く着けと掌に爪を食い込ませた。
やっと電車が禪院家の最寄りに到着すると、直哉は走りはせずとも速度を上げながら駅を出てタクシーを拾った。険しい表情の直哉に、運転手は若干怯えながらも示された目的地に車を走らせた。
数分後にタクシーが停まった。釣りは要らんとばかりに万札を乱暴に置くと、一言も無しに車を降りた。
─────それは、ある雨の夜の事だった。
直哉「……繰り返す気は無いで」
「……」
Aは、形の崩れた箱を大事そうに抱えて、柱にもたれかかるように蹲っていた。
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ｃ - イメ画とかいらね (2022年3月14日 13時) (
レス) @page30 id: 18168bf8a3 (このIDを非表示/違反報告)
すみた先生(プロフ) - 朔夜さん» コメントありがとうございます！なんか途中から某クズ男が出てこなくて困惑してる作者です(笑)。でも一先ず山場は越えたので私としても良かったです！ (2022年2月6日 23時) (レス) id: 547ebe12b8 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 鈴さんが救われて良かったです！ (2022年2月6日 23時) (レス) id: 86462b34bc (このIDを非表示/違反報告)
すみた先生(プロフ) - ツバメさん» ありがとうございます！なるべく早く更新するよう頑張ります！！ (2022年2月6日 22時) (レス) id: 547ebe12b8 (このIDを非表示/違反報告)
ツバメ - 面白いです もっと見たいです更新頑張って下さい (2022年2月6日 22時) (レス) @page20 id: 020ea1b549 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すみた先生 | 作成日時：2022年1月19日 23時
