38話:決死の覚悟。死地にて ページ40
Aは憔悴していた。疲労に疲労が重なり、体を回復させる暇すら自身に与えず、絶え間なく攻撃し続けた。
「中々骨のある小童よのぉ……儂も幾百年振りに血が踊るというもの」
「……!」
今まで特に動きの無かった呪霊が、組んでいた腕を広げた。新たな動きにAはその姿を凝視する。一旦立ち止まり、然と見極める。
「小童、名は何という」
「……誰が言うかクソ呪霊」
「儂は弥雲(やくも)。冥土の土産に、お主を浄化させた神の名を覚えよ」
Aは返事をせず、ただ瞬きも忘れて次の一挙一動に神経を注いでいた。そして、高速に回転する脳内では、あらゆるパターンの攻撃手段を、より確率の高い順に挙げていった。
弥雲が両の手を握った瞬間。Aは体の力が抜ける感覚に陥った。否、実際にAの体からは、呪力を中心にあらゆる力が吸い取られていっていたのだ。
弥雲「意趣返し。お主がやった事を儂もやったまで」
「っ……お、れは……奪ってなんかっ、ない……」
弥雲「細かい事は気にするでない」
更に吸い取る力を強めた弥雲。Aは膝を着いて刀を手放した。それでも目だけは、決して相手から逸らそうとはしない。
「……、…ぅ……と……ぇ……、」
弥雲「何を言っておるかは知らぬが、力が尽きれば終わりじゃ」
睨み上げながら、Aはブツブツと呟き続ける。脳内を整理するように。
「出力を上げる……制御……抑える……広げる……手の、中に……応用………全部……奪ってやる」
Aの感覚は研ぎ澄まされていた。爪の先まで神経が通っているかの如く、どんな空気の流れも敏感に感じ取っていた。そして、疲労とは裏腹に冴え渡る頭。術式を使えば使うほど、磨き上げた鉱石のように、鋭く光る。
そして
「……出来そう。……いや、
出来る。」
途端、弥雲はAから何も奪えなくなった。術式を解いたからでは無い。扉が閉められたような感覚……いや、これは…………生き物が己の最大の力をぶつける時に現れる……溜め。
Aの足元には、丁寧な指使いで【愛】と印された。
「領域展開…………一騎当千」
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すみた先生(プロフ) - ツバメさん» 甚爾は完全に私好みで生存させました(笑)。お褒めの言葉ありがとうございます!!続編も頑張って更新しますのでお楽しみに! (2022年1月30日 11時) (レス) id: 547ebe12b8 (このIDを非表示/違反報告)
ツバメ - 甚爾きたーー!最高です( ´艸`) 続編楽しみです (2022年1月30日 0時) (レス) @page21 id: 020ea1b549 (このIDを非表示/違反報告)
すみた先生(プロフ) - せなさん» ありがとうございます!頑張ります!! (2022年1月27日 22時) (レス) id: 547ebe12b8 (このIDを非表示/違反報告)
せな(プロフ) - すみた先生さん» なるほど、わかりました! 作者様の中できちんと理由があったのなら、大丈夫です!(?) 続編の説明も拝見しますね! これからも応援してます、頑張って下さい! (2022年1月27日 21時) (レス) id: d530fc9998 (このIDを非表示/違反報告)
すみた先生(プロフ) - せなさん» コメントありがとうございます!そのことに関して私の中で完結させていたので、説明が無いままでした。申し訳ありません。続編にて説明の場を設けたいと思っていますので、お手数ですがそちらの方でご覧になって頂ければ幸いです。 (2022年1月20日 18時) (レス) id: 547ebe12b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すみた先生 | 作成日時:2022年1月9日 2時