33話:兄と弟 ページ35
最近、こいつに、より一層絆されてるような気がしてならない。俺には無いはずの情を引き出し、俺を肯定しようとする。ムカつく……俺は自分のペースを乱される事が何よりも嫌や。言い淀まれるのも好きじゃない。レスポンスは速い方が良い。だから、初めて話した時はストレスが比じゃなかった。
感情でしか動けないガキは嫌いなのに。
「……直哉は……普通に優しいと思う」
なんやそれ。普通って何やねん。普通に優しいって言わんし。そもそも俺に優しいとか……
「……俺がここに帰ってきたかったのは……直哉が助けてくれたからだ」
やめぇやその真っ直ぐな目。嫌いや。俺はただ、疲れた体をあれ以上動かしたくなかったから怨霊の圧に従っただけ。明らかに強い気配に、面倒臭いと思っただけ。決して、助けたかった訳やない。絶対に。
甚爾〈理由なんて後付けでいくらでも作れんだよ。もうちょい賢くなれガキ〉
昔の甚爾くんが言う。俺は……知らず知らずのうちにその言葉通りに生きていた。誰よりも強く、誰よりも賢く居る為に、何においても狡猾で。クズだ何だと罵られても、どうせ雑魚やん、と相手にしてこなかった。
理由は、後付けでも……
直哉「……お人好しはいつか刺されるで」
「……俺は人を選ぶ。嫌いな奴は嫌いだ」
こいつの目には、前々から不思議な力があるように思う。いや、不確かなものを信じるなんてそんなオカルトであるつもりは無いが、こいつと喋っていると、どうにもいつもの自分を保てない。らしくない事ばかりや。
直哉「A」
「!」
直哉「……俺の事好きなん?意味はどうでもええけど」
初めて口にした、名前。
「……好きだし、嫌いだ。お前はムカつく奴だし、クズだし。でも……兄貴みたいな雰囲気は、嫌いじゃないよ」
末っ子。天才。みんな俺に期待しとった。俺こそが次期当主だと。でも時たま……その何十もの期待が、ガキの俺の肩には重いと感じる時があった。頭を撫でて、何度も褒められた事なんて無い。それが普通。俺の普通やった。ただ強くある為に、俺はバカみたいに演じ続けた。それで良いと思っていたのに。
術式も、家柄も、地位も。全部抜き取った禪院直哉を、こいつは真っ直ぐに見る。
直哉「……俺も。Aの生意気な弟みたいな所は……嫌いやない」
「!……うん」
一度、本当に一度だけ。物心つく前。俺は弟が欲しいと言ったらしい。
絆されるのも……存外悪くは無いのかもしれんな。
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すみた先生(プロフ) - ツバメさん» 甚爾は完全に私好みで生存させました(笑)。お褒めの言葉ありがとうございます!!続編も頑張って更新しますのでお楽しみに! (2022年1月30日 11時) (レス) id: 547ebe12b8 (このIDを非表示/違反報告)
ツバメ - 甚爾きたーー!最高です( ´艸`) 続編楽しみです (2022年1月30日 0時) (レス) @page21 id: 020ea1b549 (このIDを非表示/違反報告)
すみた先生(プロフ) - せなさん» ありがとうございます!頑張ります!! (2022年1月27日 22時) (レス) id: 547ebe12b8 (このIDを非表示/違反報告)
せな(プロフ) - すみた先生さん» なるほど、わかりました! 作者様の中できちんと理由があったのなら、大丈夫です!(?) 続編の説明も拝見しますね! これからも応援してます、頑張って下さい! (2022年1月27日 21時) (レス) id: d530fc9998 (このIDを非表示/違反報告)
すみた先生(プロフ) - せなさん» コメントありがとうございます!そのことに関して私の中で完結させていたので、説明が無いままでした。申し訳ありません。続編にて説明の場を設けたいと思っていますので、お手数ですがそちらの方でご覧になって頂ければ幸いです。 (2022年1月20日 18時) (レス) id: 547ebe12b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すみた先生 | 作成日時:2022年1月9日 2時