112発目 ページ29
ドクターに渡した薬のおかげでクロの容態は安定した。
そして2日目。
「……、」
『やぁ、おはよう』
「────……？」
口を動かすも、掠れた息しか出ないことにクロはハテナを浮かべた。
「これ飲ませろ」
ドクターは私に急須を差し出した。
『残念だけど私が看病するってのはキャラじゃないんでね。頼むよドクター』
ドクターは舌打ちをしてクロの口まで急須を持って行った。
「……っ」
「わざわざ治療した患者に毒なんざ飲ませねぇよ」
「……」
しばらく怪訝そうな顔で急須を睨んでいたクロは、観念したように口を開けた。
一口、二口、と少しずつ飲んでいきながら、だんだん表情が柔らかくなっていく。
「……はぁ」
「ただの経口補水液だったろ。
気分はどうだ」
「は……最悪だよ。敵に助けられるとか……ザマァねえ」
『まぁ結果的に戻って来れたんだから良しとすれば？』
「……他の奴らは」
『残念ながら全員無事なんだな〜これが』
闇市でのことは伏せておくか……
『惚れ惚れするほどの仲間愛だった。私がお前を連れて行こうとした時、"絶対にクロを返せ、返さなかったら殺す"ってマジな目で脅されたよ。ブレインに至ってはここまで着いて来たしね』
「あいつが……？」
『相当慕われてんだな。羨ましいよ』
「ふっ……思ってねぇくせに」
『……私には唯一無二の相棒が居るから、それで満足なんだよ。
そうそう、お前が倒れた後ずっと背負ってたのはQUEENだ。後でお礼言っといたら？』
「誰が言うか」
『あっそ。……ま、明日まで安静だから。それだけ言いに来た』
椅子を立って部屋を後にした。外にはQUEENが車に乗って待っていた。
「目ぇ覚めたか」
『……うん』
「良かったな」
『馬鹿言うな。クロが死んだら私が殺されるんだ、それがチャラになった事に少し気が楽になっただけ。そもそもお前すら思ってないくせに』
「まぁな。じゃあ帰るか」
『ん』
やっぱりこういうのは嫌いだ。
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作者名：すみた先生 | 作成日時：2021年4月10日 18時
