22発目 ページ24
「え……？」
『私、今日友達も誰も来ていなくて……その、心細くて』
涙目上手く出来た。
『ごめんなさい、あなたも仕事があるのに……』
「いや……」
『あの』
「？」
胸元からホテルのキーを取り出す。
『今日ここに泊まる予定で部屋を取っておいたのですが……ここまで連れて行ってくれませんか……？お願いします』
「……しかし」
チラチラと大臣を見ている。
でも所詮男。それもヨーロッパの男なら血には抗えないだろう。
上目遣い、腕を前で交差、甘える声、フランス語でとびっきりの誘い文句を
『トエルさん格好良いから……ダメ、ですか？』
「！！……仕方ない。部屋に送るだけだよ？」
『ありがとうございます……！』
「ほら、僕に掴まって」
『はい……！』
今の私の顔は恋する乙女だろう。目はハート。頬はほんのりピンク色。
所謂お姫様抱っこで会場を出る。エレベーターでも格好は変わらなかった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「あ、あれってさっきの」
「怪我でもしたのか……？」
《ナイト、あれがターゲット》
「マジかよ……！？」
「でももう行っちゃいましたよ！」
「……まっつん、あれって」
「ハニートラップ、だな」
「どうしますか」
「戻ってくるのを待つ」
「わかりました」
「おいおいどうすんだよ……行っちまったぞあいつ」
「一緒にいた女性は……」
《招待客のリストには載ってねぇ。一般参加だ》
「あの女……さっきの」
「どした」
「あ、いや……もしかしたら」
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作者名：すみた先生 | 作成日時：2021年1月10日 23時
