誇りが9つ ページ10
『ただいまー』
「おかえり！！」
あれ、なんでいるんだろ
『どうした杏。何か用でもあったのか？』
「何も無い！」
『素直だなぁ』
「お前はもう少し肩の力を抜いたらどうだ！」
『うーんこれが性に合ってるんだ』
「そうか！」
やはり心地良い。杏の隣が世界で一番安らげる。片割れに寄りかかる。隠はいないから大丈夫だろう。
「疲れているな」
『ああ。杏も疲れているなぁ……』
「ああ」
背中合わせで座る。大きく、温かい背中だ。こんなに寄り添ったのはいつぶりだろうか。
「10年ぶりか……懐かしいな」
『双子にはお見通しか。……懐かしいよ』
10の時、母上が亡くなった。千は物心つく前、私達がしっかりしなければならなかった。悲しみと寂しさから、よく私と杏はこうしてお互いを慰め合っていた。
「嘉柳……凪から聞いた。今度行ってこようと思う」
『そうしてくれ。私は、父上の心を動かすことは出来なかった』
「俺も出来ないだろう。だが俺達は進むしかない。父上に見向きもされなくても、千寿郎を守ってやれるのは俺とカヤしかいないのだからな」
『そうだな……千には、好きなことをやって欲しいのだがなぁ』
私達が背負わせてしまった分、これからの人生を悔いなく過ごして欲しい。
「……お前は優しいな」
『お前もな』
2人で笑い合う。今がどんなに幸せだろうか。ずっと続けばいい、杏の隣に立ち続けたい。叶うだろうか。叶えたい。
「心配するな。俺はお前から離れたりなどしない！」
『私もさ。双子とは切っても切れないもので結ばれているらしいからな』
安心したのか、私も杏もいつの間にか眠りに落ちていた。
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作者名：すみた先生 | 作成日時：2020年10月25日 19時
