誇りが6つ ページ7
『只今戻りました！』
見慣れた門をくぐると、走ってくる少年。
「おかえりなさい姉上！」
『ただいま千。中々来れなくてすまなかったね』
「いえ、姉上と兄上はお忙しいので」
この子はいつからこうなったしまったのだろう。私達が柱になった時から、それまで教えを乞われていた剣術も口に出さなくなっていった。
本当にすまないと思う、心から謝りたい。この歳ならばもっと遊びたいだろうに、もっと兄や姉に甘えたいだろうに……我慢させてしまってごめんな
身体は勝手に動いていた
「あね、うえ……？」
『大丈夫だ、私達はお前を信じているから。言いたいことはなんでも言いなさい。弟なら姉に甘えてくれ』
「っ……ありがとうございます」
『よし！久しぶりに剣術を教えてやろう！ほら、木刀を持っておいで』
「！はいっ、今持ってきます！」
今日は任務もない。夕方までここに居られるだろうか。
『……父上』
「千寿郎に何を言った」
『剣術を、教えようかと……』
「くだらん。大したものにもなれぬと言うのに、何故叶いもしない夢を与える」
こんな人ではなかったのに。誰よりも尊敬していた、大好きだった父上……
『お言葉ですが父上、千寿郎の人生は千寿郎のものです。私達が口を出して良い代物ではございません。私は、彼が自分の思うままに生きて欲しいだけです』
剣士になりたいと言うなら、全力で教えよう。
「ふん……勝手にしろ。お前も杏寿郎も、どうせ高みへは行けんのだ」
そう吐き捨てて、父上は自室へ戻った。
『私は……煉獄の名を背負っている限り、その誇りを忘れはしません』
あどけない表情の千を見て心が痛んだが、気付かぬフリをして私は木刀を握った。
『千、お前も鬼殺隊に入りたいか？』
「はい！俺も2人のような強く、優しい剣士になりたいです」
『そうか。いいか、私も杏も、かつての父上も、煉獄家の誇りを持って戦っている。
千、お前もそのような者になりたいと言うなら……私達は全力でお前を応援する』
私が、絶対にお前達を守るから。
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作者名：すみた先生 | 作成日時：2020年10月25日 19時
