誇りが39つ ページ41
3週間が経った。
「煉獄さん、辛いのは分かりますが栄養は取っていただけませんか?」
「食欲が、無いんだ……」
「……今日は弟さんが来られていますよ」
「千寿郎が……?」
「兄上!」
栗花落さんに連れて来られた部屋には、憔悴しきった兄上が座っていた。側のベッドには、姉上が
「……姉上は」
緩く首を振る兄上。涙が込み上げてくる。どうして自分はこんなにも無力なのか、どうして自分は強くなれないのか。2人のようになりたいのに……!
「すまない千寿郎。お前の姉を、嘉柳を守れなかった……すまない……っ」
「いえ、兄上は……姉上は……」
2人は双子だった。今の時代、双子はそうそういない。だから珍しがられた。
いつも一緒にいた。俺よりもずっと長く、強く結ばれていた。2人にしか分からないことがあるのだろうと。2人が柱であることが俺の支えだった。目標だった、希望だった。でもそれは2人が揃っていなければ成り立たない話で。
2人はいつも笑っていた。でも兄上は時々険しい表情をすることがあった。姉上はいつでも完璧に笑っていた。完璧すぎる程。
兄上と姉上は決して弱音を吐かない。少なくとも俺の前では。だからこそ、お互いに支え合ってきたんだろう。唯一無二の相棒として。俺には成し得なかったことを
「父上は……何か、言っていたか?」
「……いえ、俺も話が出来ていません……」
「そうか……
千寿郎」
「!はい」
「嘉柳はな、誰よりも煉獄家の誇りを胸に、燃えていた。父上に足蹴にされようと、街の人間から疎まれようと、決して折れたりはしなかった。誰よりも煉獄家を想っていた、守ろうとしていた」
芯のある声音は姉上と同じだ。だから辛い。
「姉上……っ」
「誇りを胸によく戦った。これは家族としてではなく、同じ鬼殺隊の柱として賞賛したいんだ」
「兄上と姉上は……!俺の、っ誇りです……!」
「!……それが聞けて良かった」
兄上は、残った左手で頭を撫でてくれた。
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作者名:すみた先生 | 作成日時:2020年10月25日 19時