誇りが20つ ページ22
山から産屋敷邸に直行だ。一応泥などは落としてきたが、大丈夫だろうか。
『お館様、ご報告に上がりました。報告書も後程書きますが、直接お伝えしようかと』
「ありがとう、話しておくれ」
『はい。今回の鬼は十二鬼月ではなかったものの、目に文字が刻まれていました。文字は"鬼"、両目でした。
私より先に来ていた隊士35名は残念ながら……』
「知っているよ。嘉柳は1人でよく頑張ったね。
自分以外を山に入れなかったのは何故かな?」
『強い鬼の気配を感じたからです。数は2、3。迂闊に隊士を立ち入らせ被害を拡大させるよりは、麓を守ってもらいたかった。私は鬼の討伐、他の隊士は麓近辺の警護をと思いました』
「いい判断だったね。これでまた一つ、平和に近付いたと思うよ」
『はい。我々もお館様のご創建を切に願っております故、どうかこれからもご活躍されますようお身体にお気を付けて』
「ありがとう嘉柳。しっかり休んでね」
『はいお館様』
そういえば弟擬きは目に何も無かったなぁ……
『っ……』
頭痛……?天元達と飲んだのがまだ響いているのか。しのぶに薬を貰いに行こう。
とその前に、屋敷で身体を洗わなくては。
『ただいま』
「!おかえりなさいませ嘉柳様」
この子は使用人の柚(ゆず)。私の2つ年下だ。遊郭で傷付いていたところを天元が見付け、私が引き取った。素直で働き者、いい子だよ。
『悪いが、湯を沸かしてくれるかい?』
「はい、準備致しますので今しばらくお待ちください」
自室に戻ると綺麗に整頓された空間。柚が屋敷の掃除をしてくれたようだ。
『柚、掃除してくれたんだね。ありがとう』
「いえ。私が出来ることなんてこれくらいしか……それに、ここに来られるのも不定期ですし」
『それでも私は助かっているよ。ありがとう』
「ありがとうございます。
あ、嘉柳様。先程炎柱様がお越しになられていましたよ」
『杏が?何か言ってたかい?』
「"千寿郎に会ってきた。良い時間を過ごすことが出来た。機会をくれてありがとう"と。とても嬉しそうに話してらっしゃいました」
そうか、千に……
『教えてくれてありがとう。風呂に入ったら私はしのぶの所へ行くね』
「分かりました。任務、お疲れ様です」
にっこり微笑んだ柚に癒され、私は風呂場に向かった。
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作者名:すみた先生 | 作成日時:2020年10月25日 19時