誇りが14つ ページ15
『凪、集落はあそこかい？』
「ソウダー！」
ふむ……不用意に近付くのは良くない。まずは周辺の人に聞き込みをしなければ。
『すみません、少し宜しいでしょうか』
「ん？どうしたんだい？道にでも迷ったのかい」
『いえ、最近ここいらで人が消えているとの噂が立っているもので。私はその調査に来ています。何か情報があれば教えて頂けませんか？』
すると目の前の男性は目の色を変えて私の肩を掴んできた。
「駄目だ！あんた、このことに首突っ込んじゃいけねえよ」
『……人が、消えているんです。もしかしたら傷付いているかもしれません。
何か、知っているんですね？』
「っ……あれは神さんの怒りだ……」
神の、怒り……？鬼に決まっているのに何故神？
『神様がどうかしたんですか？』
「あの集落の人間は皆おかしいんだよ。神のお告げがあったとかで毎日騒ぎ立てたり、挙句の果てには生贄まで差し出す始末だ」
『生贄？神に、ですか』
「……違う」
そう言うと俯いてしまった。私は待った。
『大丈夫、話してください。私が必ず解決してみせましょう』
「……俺は1度、"儀式"を見に行ったことがあるんだ。儀式っつーのは生贄を神に捧げるとかで、生贄を喰わせるんだ」
予想がついてしまった……
「生贄を喰ってるのは……鬼だ」
つまり、集落の人間は鬼の存在を知っていて、鬼に生贄を捧げていた。鬼が神、又は神の使者とでも思っていたのだろうか。
「生贄は毎月1人差し出している。俺が見たのは先月だ。そして、儀式の日は決まって新月の晩だ」
新月……暦通りにいけば
今日が新月の晩だ。
「俺はすぐ逃げたから見つかんなかったけど、そんな派手な格好してたらすぐ見つかるぜあんた。
集落の人間は鬼側の奴らだ、助ける必要はないんじゃねえのか」
送り込んだ隊士が全滅。恐らく人間が鬼に手を貸したんだろう。よもやよもやだ……
だが
『如何なる理由があろうと、例え鬼を神だと崇めていようと、
鬼は人を喰らう醜い化け物だ。生贄などいてはいけない。理不尽に命が奪われることはあってはならない。喰われてよい人間などいない。』
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作者名：すみた先生 | 作成日時：2020年10月25日 19時
