「早く起きて」 ページ50
マイクは頭を冷やしてくると言って出て行った。
「.....」
まただ。またこの感情だ。名前を付け難い、微妙な気持ち。僕が僕であるためには必要無さそうなのに、無視するには大きすぎる気持ち。
「ショータ、起きて。...起きてよ」
君が起きれば消える気がするんだ。だから
「早く起きて」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「早く起きて！ご飯できるよー！」
「……うるさい」
「おーきーてー！！」
細い肩を揺さぶる子供。ベッドに沈んでいこうとする兄を引き留めようと力を強める。少年は鬱陶しいと顔を顰めた。しかし、こうしていても安眠は無理だと分かっているため、仕方なく起き上がった。
こんな毎朝のルーティンを微笑ましく眺めている兄弟達に、彼はため息を吐いた。これもまた、同じ光景なのだ。
「ほら早く着替えて。準備手伝わなかったら洗濯当番変わってもらうわよ」
廊下から顔をのぞかせた少女が目を細めて言う。
「どっちだってやらせるくせに」
「イタズラの代償よ。妥当なペナルティだと思いなさい」
悪態をつく少年に、年上らしき少女はそっぽを向く。そのまま廊下を進んで行った。部屋に居た何人かは少女の後を追って元気よく駆けて行く。
「行こうよ！」
「はいはいうるさいなぁ。先行っててよ」
ベッドから降りて寝間着のボタンに手をかける少年。弟は素直に頷いて部屋から出ていこうとする。
「今日も平和な世界に感謝だね！ユキ！」
「……そだね」
純粋に黒い笑顔に、不気味さを覚えたのはいつ頃だったろうかと、少年は白い服を羽織った。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「ふぅん……」
まさか僕が「起きて」を言う側になるとはねぇ。ていうかあんなの思い出すの不快でしかないわ。
「…あんなとこ」
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作者名：すみた先生 | 作成日時：2022年8月17日 12時
